第6章 日常
「あんなのズルいよ…かっこよすぎじゃん」
木兎さんの超インナースパイクを見たあかねちゃんが呟く
「ほんまに…みんなみんなカッコよし男すぎるわ」
何度でも打つ
何度でも拾う
言葉は聞こえなくてもプレーが、そう言ってた
わざわざ東京まで来た甲斐があった
マッチポイントからデュースになり、結局最後は打ち合いになり
音駒28:30梟谷でようやく決着がついた
見応えたっぷりの試合が終わり、私は立ち上がって大きな拍手を送った
負けた音駒に悲壮感はない
もう1試合
次の試合がある
その試合に勝てば代表には残れる
みんなには闘志が漲っていた
「あとがないね」
アリサさんが言う
「背水の陣やな、戸美ってどうなん?まぁ東京の準決まで来てるから強いんやろけど」
「んー、あかねリサーチによると黒尾くんと戸美の主将は昔からの知り合いで、会えば小競り合いが起きるらしい」
「なんじゃそりゃ」
「プレースタイルは堅実、音駒と同じく粘って粘って…相手の自滅を狙う」
「そっかぁ…私ちょっと行ってくる」
ギャラリーから立ち上がり、階下に降りると音駒の選手が廊下に集まっている
「研磨さんっ」
「歩…」
タオルで汗を拭きながら研磨さんが振り返る
「研磨さんお疲れ様でした」
「宮城から呼び出したくせに、負けちゃった」
「クソー!歩とディズニー行きたかったのに!」
夜久さんがドリンクを飲みながら近づいてくる
「それ木兎さんが勝手に言ってるだけなんで、今度内緒で行っちゃいましょう」
「まじ?!もう戸美瞬殺して、絶対行く!俄然やる気出てきた!リエーフ行くぜ!」
「ちょ、夜久さん待ってください!」
「あ、そーいやリエーフ君ありがとう!わざわざアリサさんに迎えにきてもらって」
「姉ちゃんにちょっと目立つの控えてって伝えて」
そう言いながらリエーフ君は夜久さんに連れて行かれる
その様子を微笑ましく見ていたら
「よう」
背後から肩を組まれ、見上げる
「歩ちゃん、えらいシャレこんで、俺のため?」
ニヤニヤしながら黒尾さんが言う
「シャレこんでますかね?」
いつもジャージやしワンピース姿が珍しいのかな
「今日は音駒のマネージャーなんだから、これ着とけよ」
そう言って黒尾さんの赤ジャージを渡される