第6章 日常
「…蛍、すごい顔して雑誌読んでるね」
「え、そう?」
「てかさっきから、何かずっと違うこと考えてるよね?」
「いや…別に」
「ねぇ…うちに来ない?」
「え?」
「あの日の続き、してもいいよ」
僕は驚き、見開いた目で彼女を見る
「やっと、私のこと見てくれた」
「…ごめん、先輩…やっぱり僕帰ります」
買った本をカバンに仕舞って立ち上がる
「待って」
本屋から出た僕を、後ろから先輩が追いかけてくる
「いいの蛍?私学校であなたたちのこと…
「いいですよ。誰かに何か聞かれたら僕は、まだ付き合ってません。春高終わったら告白するつもりなんでって答えるだけです」
「…あの子の何がそんなにいいの?」
「…少なくとも歩は人を陥れたり、卑怯なことをしたりしない、そーゆーとこじゃないですか」
踵を返して歩き出す
これ以上先輩と関わって歩に誤解されるのは嫌だ
グイっと後ろから腕を引っ張られ、反射的に振り返る
目の前に先輩の顔
背伸びをした先輩が僕の首に腕を回し、唇を重ねる
「なっ…」
驚いて振り解く
「蛍、また学校でね」
彼女は不敵に微笑むと立ち去っていった
僕の脳裏に初めてキスした時の思い出が蘇った