第6章 日常
ー月島side
「さー、そろそろ終わるぞー」
キャプテンが集合をかける
「ツッキー、そー言えば橘さんは?」
山口が僕に訊く
「さぁ」
あの日、教室で捲し立てられて以降、歩とは話してない
「えー、橘は今、東京の代表決定戦会場にいる」
キャプテンが言う
は?
なにそれ?初耳なんですけど
「東京のトップ4チームが激突する貴重な試合だ、橘の事だから有意義な情報を持って帰ってくると思う。結果はすぐに連絡するように言ってあるから」
キャプテンが続ける
「えーーー!アイツ東京いんのか?!今頃音駒と梟谷の準決見てんのか?!クソ羨ましい〜!!!」
騒ぐ日向に影山が
「ほんとクソ羨ましいぜ、孤爪さんと赤葦さんの公式試合一度に見れるなんて…俺も一緒に行くって言ったら、影山くんは自分の練習をしてって言われたから泣く泣く諦めたけどよ」
は?
キャプテンはともかく、歩は影山にまで東京行きのこと言ってたわけ
僕には何も知らせずに…
「ハァ」
溜め息が出る理由はもう一つある
この後、原田先輩と待ち合わせをしてる
僕の中では終わったことだし、歩にこれ以上変な誤解与えるのも嫌だし…
でも当の本人は僕には何も言わずに東京…
歯車がズレ出してる気がする
歩が言ったように、あの時先輩を置いて彼女を追いかければ、今の状況はまた違っていたのだろうか
今更言ったって仕方ないけど…
自宅に戻り、私服に着替えた
烏野高校排球部と背面にデカデカと書かれたジャージで出かけるのはさすがに気が引ける
待ち合わせ場所に着くと、もう先輩は来ていた
「お待たせしました」
「ううん、練習の後なのにごめんね、どこ行きたい?蛍の行きたいとこでいいよ」
「じゃあ本屋で」
最近駅の近くに出来た大きな本屋、カフェが併設されていて、中で本を読みながら喫茶をすることが出来るらしい
「私も行ってみたかったんだ」
2人で並んで歩く
彼女は長い髪をおろし、ベージュのコートを着て少しヒールのあるブーツを履いている。1年前の今頃はまだ付き合っていたのだろうか、自然と会わなくなっていったから最後にこんな風に肩を並べて歩いたのはいつだったか、もう思い出せない