第6章 日常
アリサさんに連れられて音駒応援団の中に入ると、小柄な中学生くらいの女の子が拡声器を担いで、こちらに向かって手を振っている
「アリサさーん、こっちこっち」
「あかねちゃんお待たせ」
「烏野高校マネージャーの橘 歩です」
「山本あかねです、歩さんのことは、兄から伺ってます。合宿の時、マネージャー代理をしていただいたみたいで、モデルみたいな美人だと…
「ほんまもんのモデルみたいな美人の前で恥ずかしいこと言わんといてよ。あかねちゃんは、山本さんの妹なんやね」
私はあかねちゃんとアリサさんの間に立ち、コートを見下ろす
「レーヴォチカ〜」
アリサさんがコートに向かって大声を出す
出た、霊墓地
「レーヴォってなに?超可愛い」
「リエーフの愛称よ」
あかねちゃんが代わりに訊いてくれた
そやったんか
心霊スポットかと…
アリサさんの声にコートのみんなの視線がこちらに集まる
「歩〜!!」
「歩ちゃーん!」
私に気付いた黒尾さん、夜久さんが名前を呼びながら手を振ってくれる
研磨さんもみんなの声で気付いてこちらを見上げて、小さく手を振ってくれた
「歩ちゃん人気者だね〜」
アリサさんに言われる
合宿の後、泣きながら別れたあの日を思い出す
敵チームの私を快く迎えてくれた大好きなみんな
音駒の公式戦に立ち会えることが嬉しい
烏野と戦う時は敵同士になるけど、今日だけはマネージャー気分味わってもいいやんな
ピーッと笛が吹かれ試合が始まる
ネットを挟んで木兎さん、赤葦さんがいる
こんな贅沢な試合あっていいの?
1点目は音駒の得点
音駒のサーブが放たれる
赤葦さんがトスをあげる
ゾクリ…
木兎さんの放った強烈なスパイクは音駒ブロックに当たり、高く上がって…
スポッ
私の両手に収まる
「え?」
「ヘェーイヘェーイヘェェェイ!!!歩!!プレゼントだ受け取れ〜!!」
コート内から木兎さんに指差され、両チームの全員の視線がこちらに集まる
唖然として言葉も出ない
「歩ちゃん、梟谷の選手からも人気なんだね」
アリサさんが言う
「いや…木兎さんは大体いっつもあんな感じです、でも今のスパイク凄すぎましたね」