第1章 出会い
「あ、はい。見学行った日、顧問の先生やと思って挨拶したら東峰さんでした」
「アハハ」
「期待を裏切らないエピソード!」
車内が盛り上がる
「じゃあさじゃあさ、2年は?」
後ろからノヤさんが身を乗り出して訊ねる
「縁下さん」
「即答!」
「何で力!」
「許すまじ縁下〜!」
「だから私がお喋りなんで、騒がしい人はちょっと…」
「ちょっとって言うな!」
田中さんの大声に爆笑が巻き起こる
「で、なんで縁下?」
スガさんが低いトーンで問いかけてくる
「寡黙やし、こないだ補習の勉強会してたじゃないですか?あの時も結構いつも残って勉強教えてくださって、本当に優しいんです。しかも、バレーやってる時は結構静かな闘志を感じるんですよね」
「結構よく見てるね」
「なんか私が縁下さん好きみたいな流れになってますけど、みなさんのこともちゃんと見てますからね!何なら今晩1人ずつイイトコ言うていきましょうか?」
「何その士気ブチ上がり企画!」
「俄然やる気!」
「はいはい、みんな落ち着いて。じゃあ本題、1年生の中だったら?」
スガさんの目が笑ってない
えっと…
それはさすがに…
「もちろんツッキーだよね!」
山口くんがスガさんの前の席からピョコっと顔を出す
「え?」
「だって橘さんとツッキー、4組で夫婦とか言われてるもんね!それにツッキー寡黙だし」
「ツッキー寡黙?1日1回、いや5回は嫌味言ってくるけど」
「それは好きな子ほどイジ…
「山口うるさい、僕はこんな騒がしい女無理」
「は?なんで告白してへんのに振られたみたいになってんの?とりあえずこっちこそ、バレーしてる時のツッキーは、そんな好きじゃないです!」
「おいこら、夫婦喧嘩すんな!」
大地さんが仲裁に入る
『夫婦じゃないです!!』
ハモる
「息ピッタリか!」
車内爆笑
「やっちゃんは見た感じから熱い人が好きやんな?」
「歩チャンっ!」
やっちゃんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にする
「潔子さんはどうですか?」
「橘ナイスパス!」
「お前はやる女だと思ったよ」
「私は…
逆にあまり話すのが得意じゃないから、話してくれる人の方がいいかな」
「ウォォォォーーー!」
「俺っすか?!俺っすよね?!」
ー夜道をバスは走る