第6章 日常
ー月島side
「ああ、じゃあ明日コピーして…
「今、行くよ」
無理矢理歩の手を引っ張って部室から出る
「ちょちょちょ、ツッキー!
歩の書いた年表が分かりやすいと思ったのは事実
でも今すぐコピーしに行くってのは口実
明らかにさっき縁下さんは歩に何か言った
顔赤らめて…一体何言われたっていうの
手を引っ張りながら階段を降りると、辺りはすっかり真っ暗だった
校舎までの道を手を繋いだまま歩く
後ろを歩く君はどんな表情をしてるの
「ちょ、ツッキーどうしたん?!そんなに年表欲してんの?!」
「さっき…」
「え?」
「縁下さんに何か言われた?」
「え、別に」
立ち止まると、勢い余った歩が僕にぶつかる
「わっ!急に止まらんといてよ」
「本当は?なんて言われたの?」
「え、えっと…大したことちゃうねんで!田中さんとノヤさんがマネの中やったら潔子さんがタイプやって言うたから、縁下さん気遣って、俺は橘さんやでって言うてくれただけ」
「そ」
僕は歩の手を握ったまま歩き出す
縁下さん…
やっぱり油断ならない人
僕ももう逃げない
今日、歩の返事を聞く
校舎に入り、下駄箱で靴を履き替える
職員室はすぐ近くだ
「すいません、ちょっとコピー機借りたいんですけど」
ちょうど僕たちのクラスの担任がいる
「月島、橘遅くまで勉強か?」
「はい」
「感心だな〜、コピー機隣の資料室のつかっていいから」
「ありがとうございます」
一度職員室を出て、隣の資料室に入る
コピー機を見つけた歩は、スキャナー部を開けて年表を挟み込む
「せっかくやし、山口くんとやっちゃんの分もコピーしとこ。3枚…と、サイズは…どこや」
「これじゃない?等倍」
ピッ
パネルを操作する歩の後ろから、コピー機のボタンを押し、耳元で話しかける
「さっきの話…」
「え?」
「1年の中、じゃなくて…歩の本当に好きな人は誰なの?」
「…わ、私の」
歩が振り返る
あまりの距離の近さに一瞬たじろぐ
ガラッ
「お取り込み中だったかしら?」