第6章 日常
ー歩side
ノヤさんが難しい顔をして腕組みしながら何かブツブツ言ってる
「いやー、どちらも捨てがたいが…すまん!歩!お前も充分魅力的だが、俺のタイプはやはり潔子さんだ。本当にすまない」
「待ってください、告ってないのに振られたみたいな雰囲気やめて貰っていいですか?」
申し訳なさそうにする田中さんとノヤさんにツッコみ、部室がドッと沸く
「…俺は、橘さんだよ?」
「ほぇ?」
喧騒の中、隣に立つ縁下さんがボソッと耳打ちする
え、それってこの流れのやつやんな?
田中さんとノヤさんのタイプは潔子さんで
縁下さんは…私ってこと?
こんな話に縁下さんが乗ってきたのも驚きやし
いつもやったら怒られるとこやのに…
ポッと顔が赤くなる
自分やって、2年の中で縁下さんがタイプって堂々と言い張ってるくせに、言われる側に回った途端、めっちゃ恥ずかしい
いやでもあくまでマネージャー3人の中やったらって話やから、別に他意はないんやろうけど…
「ちょ、橘!何顔真っ赤にしてんだ!さては縁下になんか言われたな〜!」
田中さんがニヤニヤしながら言う
「い、言われてませんっ!はい、もうこの話は終わりっ!自分の勉強してください」
無理矢理勉強モードに切り替える
「そやそや、私自分が復習したいのもあってんけど、日本史の年表作ってきたんやった」
カバンから出した日本史の年表のコピーを翔陽と影山くんに渡す
「これ、橘さんが作ったのか?」
影山くんが両手で持った年表を食い入るように見つめる
「いや、昨日の2人見て思ってんけど、まず時系列が全く分かってないねん。いつの時代が前で後か、今からどれくらい前の出来事なんかとか。イメージも出来ひんくせに、暗記するとかまず無理やん」
「えーっと…俺ら怒られてる?」
翔陽が怯える
「まだ怒ってへん。これがあったら勉強した内容が、大体いつぐらいのことで、何の動きに繋がってくか分かりやすいやろ?」
「本当すごい、わざわざ…その…ありがとう」
珍しく影山くんにお礼を言われる
後ろから手がスッと伸び、影山くんの手から年表が取り上げられる
「ちょ、お前何すんだよ」
「歩これ僕にもちょうだい」
影山くんから奪い取った年表を見てツッキーが言う