第6章 日常
「強さは別に…
「強いですよ、縁下さんは…」
「そう?」
「結局、人間なんて自分が経験したことしか分からないですから…逃げたって言いますけど、それだって経験です。その経験が今の強くて優しい縁下さんを作ったんですね」
トントンと資料を整えながら彼女がニコリと笑う
一瞬ドキリとした
部室に2人きり
良からぬ想像が首をもたげる
「さっ、もう昼休みが終わるから戻ろうか」
煩悩を掻き消すように立ち上がって言う
「あ、はい。今日は真面目にやりますからね!」
「期待してるよ」
ー部活終わり
「ちょっと君たち本気でやる気あるわけ?」
月島が眉間に皺を寄せながら眼鏡をクイッと上げる
今日も通常運転だ
「今日の昼休み、橘さんが頑張ってお前たちのために資料作ってくれたんだぞ、真面目にやれよ」
「そうなのか?歩!俺、いや俺たち頑張るよ」
「当たり前やろ、私の貴重な昼休み使わせたんやから」
「圧!」
「いや、それはそれで?」
ニヤニヤしながら田中がふるが
「別に良くないですから!」
と、日向が答え部室がドッと沸く
「そういや歩さー、前に合宿ん時に2年で1番タイプなのは力だって言ってたけど、そろそろ俺に心変わりしたか?」
急に西谷が話し出す
「何言うてるんですか?」
「だって烏野には俺アリだろー?お前あの試合見て、ノヤっさん、カッコいい〜ってなんなかったわけ?」
「それはなりましたけど」
「それを言うなら田中さんもインナークロスキレキレかっこいー!てなっただろ?」
「それもなりましたけど」
「じゃあ改めて聞くぞ!2年で1番タイプなの…
「縁下さんです」
「食い気味!」
「なんでだよっ」
西谷と田中が抗議する
「それはそれでー?」
橘さんがふると
「いいけども!」
2人の声が揃い、橘さんは笑う
「だから騒がしい人はアレやって…大体なんでいつも私ばっかり、これ聞かれるんですか?」
「確かに!フェアじゃなかったな橘!俺のタイプは潔子さ…
「存じてます」
田中の発言を被せ気味にツッコむ橘さん