第6章 日常
ー月島side
今日の放課後、知らない女の子に呼び出された
自転車置き場の前に行くと、2人の女の子がいた
僕を呼び出した人が話し出す
「この子ね、前からずっと月島くんのこと好きだったんだけど」
後ろにいる女の子は何も言わない
ただ俯いてるだけ
「こないだの、試合も行ったんだよね」
と、友達に訊かれてコクリと頷く
「…で、何?」
「な、何って何?だからこの子が…
「君には聞いてない、後ろにいる君、僕に何か話があるんじゃないの?」
「え…あっ…と…その」
口籠もりながら友達の制服の裾をギュッと摘む
「言いたいことがあるなら自分の口でハッキリ言いなよ」
「なっ、この子はね、本当に月島くんのことがずっと好きで、話すだけでも緊張しちゃうの!誰もがみんな橘さんみたいにズケズケと無神経に話せるわけじゃない」
「歩?何で歩が出てくんの?」
「2人が付き合ってるって噂があるでしょ?月島くんも他の女子とはあんまり話さないのに、橘さんとはよく話してるみたいだし」
「はぁ」
「大体有馬さんなんて、ガサツで女の子らしくない子のどこが良いわけ?男の子ってそういうの疎いけど、女子の間では、むしろサバサバしてるのを演じてる性悪女って噂だよ。しかも男好きで他校の男に迎えに来て貰ってたらしいし、月島くん弄ばれてるんだよ」
「君もそう思うの?」
奥にいる子は俯いたまま返事をしない
「友達にばっか話させて卑怯だと思わない?」
「何てこと言うの!この子はっ
「正直、よく知りもしない歩のことを悪く言うキミよりも、自分の手は汚さずに人に気持ち伝えて貰ってるそっちの、キミの方が腹が立つんだけど」
冷ややかに言い放つと、2人の隣を通って自転車置き場をあとにする
女って面倒臭い
確かに歩は天然男たらしなトコがあるのは否めないけど…
少なくとも教室にいる彼女も部活してる彼女も、いつも前向きで真剣なことは僕自身が一番よく知ってる
それからも代表決定戦を見てどうのって何人か告白された
面倒くさい
でも好きだと相手に気持ちを伝えられる
それって結構すごいことだな
僕はドシャットくらって振られるのが怖くて
返事されることから逃げた
いつまで逃げ続けるんだろう…