第6章 日常
ー二口side
偶然スポーツ用品店の前を通りかかると、見覚えのある女子高生が目に入った
そういや、サポーターもうすぐ買い替えようと思ってたんだっけ?理由をつけて店の中に入った
歩は頼まれてたものを買って自転車のカゴに入れる
「今日は1人なんですか?」
自転車を押しながら、隣を歩く歩が訊く
「おお、サポーター買いに。インハイで烏野へし折るためにな」
「はぁ」
「おい、お前元気ないの?パイセンがコーヒーでも奢ってやろうか?」
そんなこと言って、偶然出会ったコイツともう少し話がしたいのは俺の方
コンビニでホットコーヒーを二つ買って、一つを歩に手渡して、近くの石垣に腰を下ろす
「歩、お前今日ツッコミのキレないな」
「ツッコミのキレって…スランプの芸人みたいに言わんといてください」
歩は両手で掴んだ容器を傾け、コーヒーを一口飲む
「なんかねぇ…女って面倒くさいですね」
何があったか知らないけど、この見た目でこの性格
やっかむやつの1人や2人いるだろう
「だな、ウチ来りゃ良かったのに。工業高校は男ばっかだぞ」
「ほんまにそうしたら良かったです…」
「やっぱ今日のお前キレないわ」
「だからJKにキレ求めないでください」
「まぁなにがあったか知んないけど、お前のこと良く知らないヤツの言うことなんか気にすんなよ、ドSガールらしくないぞ」
「そうですよね」
「まーあれだ、歩は他人のこと妬んで、その相手を陥れるようなことしないだろ?」
「はい」
「しょうもねぇこと言ってくるヤツは大抵自分に自信のない小さい人間なんだよ」
「二口さん…」
「学校なんてゆー狭いコミュニティでしかイキがれないやつ、相手にすんな」
そう言って華奢な肩にポンと手を置く
「…二口さんって良い人やったんですね」
「お前、俺を何だと思ってんの?」
「…ツンデレ?いや別にデレてないか…オラヤサ?」
「なんだそれ」
「オラオラで優しい」
自分で言っといて、歩は笑ってる
そーそー、お前はその顔しとけ
「調子出てきたみたいじゃん」
肘で思いっきり小突いてやる
「おかげさまで」
そう言って歩は石垣から立ち上がった