第6章 日常
「さっきから私のこと、ちょいちょいイジってるやろ」
笑いながら言う
「でも…ツッキーもほんまは、私みたいな女らしくないのより、ちっさくて可愛らしい子がいいんかもな」
絆創膏まみれの掌を見つめてボソッと呟くと、やっちゃんが真剣な眼差しで私を見る
「前に何でも相談して欲しいって言ったよね?正直に答えて、歩ちゃん、月島くんのこと好きなの?」
「…そやな」
「そっか、そんな気はしてた。昨日月島くんが怪我した時の歩ちゃん、本当すごかったから」
「すごかった?」
「うん、いつも余裕ある感じの歩ちゃんが、狼狽えてパニックになってるように見えた」
「うわー、恥ずかしい〜」
両手で顔を覆う
「てかな、ほんまに好きやって気づいたんは多分昨日やねん」
「え、昨日?」
「うん…男の子が変わる瞬間を見てしまったって感じ。今までもドキっとすることとかはあったけど、それが全部繋がって、私も好きなんかもしれんって」
「じゃあ月島くんのリードブロックは試合だけじゃなく、こっちでも成功したってことだね」
「どういうこと?」
「だって決定的に告白してしまえば、付き合えるかもしれないけど、断られるかもしれないでしょ?もし合宿のキスの時、告白されてたらどうしてた?」
「…付き合ってはなかったと思う、気になる人も別にいたし」
「そうでしょ?だから月島くんはあえて返事をさせずに、歩ちゃんと一緒に居続けて、チャンスが来るまで気長に待ってたんじゃないかな?」
そうなんかな?
うちの家に本取りに来た時とか
僕にしときなよって言われた時とか
確かに定期的にドキっとすることはあった気がする
それがもし全部計算やったら…
「リードブロックこわ」
それでもいい
ツッキーの読み通り
好きになるように仕向けられてたんやとしても
そやけど西川さん以外にもツッキーのこと
好きな子いっぱいおるやろな
昨日はウチからも応援行ってた子多かったし
そこで好きになった子もおるかもしれん
いつまでも自分のこと好きでいてくれる保証なんかない
今朝もそっけなかったし、もしかしたらもう私のことなんか…