第1章 出会い
ー歩side
合宿まであと数日
部活に放課後の勉強会にと毎日慌ただしく時間が過ぎる
帰ってから宿題したり合宿の準備したり…
「あかん、忙しすぎて自分の時間が取れへん」
午後からの英語の単語テスト
みんなと教室にいたらすぐ喋ってしまうから、1人にならんと集中出来ひん。昼休み、中庭のベンチに腰をかけながら単語帳と格闘。
ブツブツブツブツ…ふぁああ
勉強しながらも欠伸が出る
「よう」
後ろから声をかけられた
「あ、スガさんお疲れ様です」
「なになに?単語テスト?」
「そうなんですよ!私みんなといたらすぐお喋りしてしまうから、1人にならんと覚えられへんくて」
「あ、じゃあ邪魔した?」
「いえいえそんな!」
「最近部活でもよく動いてくれてるし、部活終わりも日向たちの勉強見てあげてるんでしょ?あんまり無理しちゃだめだよ」
「ありがとうございます」
スガさんは弾ける笑顔で手を振り去っていった
スガさんって優しいなぁ
本当よく見てくれてる
私のことだけじゃなくチーム全体を、一人一人を本当によく見てる人だなぁって思う
まるでお母さんのような安心感
厳しく注意した後のフォローするような笑顔
影山くんっていう天才が来て、本当は複雑な心境やのに
それを微塵も見せない
ー放課後
「大地!歩ちゃんもやっちゃんも疲れてるだろうから、今日は早めに切り上げてあげよ。この後どうせ勉強するんでしょ?」
「あ、はい。でも大丈夫です!私たちのせいでみんなの練習時間を削るのは悪いです」
「君たちだって仲間でしょ?2人が倒れて合宿に来れないなんてなったら、それこそみんな悲しむよ」
「ありがとうございます」
「だから勉強会もほどほどに。今日はゆっくりしなよ」
始まる前にスガさんが言ってくれたおかげで、いつもより1時間早く練習が終わった。
ー帰り道
「さっきはありがとうございました。」
「え、なにが?」
「スガさんは本当すごいです。みんなの様子、私たちのことまですごい見てくれてて…」
「これでも一応副キャプテンだからね」
「こんなに気がつく男の人、いませんよ。将来スガさんのお嫁さんになる人は幸せですね!」
「なる?」
「え?」
いつものスガさんの目じゃない
男の子の目