水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第1章 ※忍びの里
天空は「ふーん」とあやの顎を左右に動かしながら、しばらくの間、顔をまじまじと見るとパッと離し、今度は急に胸元に手を入れ乳房を揉んできた。
びっくりして固まっていると、眉を寄せた天空に顔を覗き込まれた。胸元の手を抜くと「まだまだだな。早く女の体になれ」と言われた。すっと盃を差し出されたので、少し酒を注ぐ。
「須磨は泣き虫で煩くてかなわんから、俺はお前で良かった。元兄の妻は当初はお前の予定だったらしいが、須磨が嫌だと泣きついたんだと。元兄も煩い奴だから、お似合いで丁度良かったんじゃないか?」
感情の読めない表情でクイっと盃を傾けると、またあやの顔を見る。
宇髄家の子息は全て「天」の文字が入った名前であるため、兄弟同士は「天」を覗いた名前で呼ぶ。任務の時に聞き間違えない様にという意味もあるらしい。天元は皆から「元」や「元兄」と呼ばれており、天空も「空」か、もういなくなってしまったが下の兄弟からは「空兄」と呼ばれていた。
あやは天空が久しぶりに元兄と呼んでいるのを聞いて、懐かしい気持ちになった。そう呼んでいる時の天空の機嫌は良いのだ。
あやは少し嬉しそうな顔を作り、
「・・・左様ですか。ありがとうございます。」
と天空の顔を見ながら返事をする。天空もちらとこちらを向いたので、あやと目が合う。天元と系統は違えど、天空の顔の造形自体はとても整っているので、ぞっとする程美しく見えた。少しの間沈黙が流れ、天空はすっと目を逸らした。
須磨が天元の妻になったのはそういう経緯かと驚いたが、泣きついている姿は容易に想像できた。須磨らしい。
「元兄は里を出て何をすることがあるんだろうな?」
「・・・想像もつきません。」
「宇髄の血を増やして優秀な忍び集団を作らねばならんのに。元兄は弟を2人殺したくらいで怖気づいて。弱い奴はどうせすぐ死ぬのになぁ?」
苦しまずに殺してやるのも情けだろうに。と言いながらあやを見る。