水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第1章 ※忍びの里
あやは、天空の機嫌を損ねないような返事を咄嗟に色々考えたが、「そうですね。」と同意することは憚られた。
天元様は仲は良くなさそうだったが、どの兄弟にも何くれと気にかけてお世話されておられた。ご自分の手に掛けたとあれば随分と気落ちされただろう。気の毒にと思いながら、当たり障りのない返答をする。
「私は天空様の優秀な妻になれる様に精進したいと思います。」
「ふん。精進は結構だが、お前は俺の妻だからまず子供だろう。もう少し肉を付けろ。・・・と言ってもまだ13なら後2年は無理か?」
と言うと深く溜息をつき、また着物の上から胸を揉むと首を傾げた。
「すみません。」
ふと、あやは、天元様はもうお子が生まれたんだろうかと思いながら、謝る。
「努力でどうにもならんことを謝る必要は無い。お前はくノ一として優秀だから早く子が欲しいだけだ。まだ産めんのでは、子種を注ぐわけにはいかんなぁ。」
言いながらまた盃を差し出すので、酒を注ぐ。すぐに煽って盆に置く。
「あや、下がっていいぞ。・・・親父がうるさいからほかの妻と子作りをせねばならん。」
あやは、まだ子供が作れない自分の身体に少し安堵する。
天空はまだ抱けない筈のあやをよく呼び出すので、嫌われてはいないと思うが、会話の端々にみえる残忍さがとても怖かった。一見好意を寄せられている様な会話も、天空の手駒のとして質が良いか悪いかを見定めているだけだと感じ、質が悪いと判断されると自分の身にどんな酷いことが起きるのか不安だった。
「はい、では、失礼いたします。」
「あ、ちょっと待て。」
天空様は静かにあやに顔を近づけると、そっと触れるかどうかの口づけをして微かに口角を上げ、ふっと鼻で笑う。漆黒の瞳がきらりと揺れるのがほんの少し見えたが見ない振りをした。
「またな。」
あやは一礼して部屋を後にする。