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水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】

第11章 ※天元か天空か


天空はあやを連れて里の方へ向かっていたが、途中少し道を逸らした。あやは道が違うことに気が付いてはいなかったが、里に行くよりも程近い所で天空の走る速度が遅くなったので不思議に思っていた。

そして「着いたぞ」と言ったところは里ではなく、里が持っているいくつかの拠点の一つである屋敷だった。白い塀に囲まれた広めの平屋の武家屋敷。庭の手入れは行き届いており、表向きは至って普通の屋敷だ。

天空は、屋敷に住んでいる里の人間に風呂の用意と簡単な食事を命じ、それが済んだら呼ぶまで人払いをする様に伝えていた。

丑の刻になったくらいだろうか、周りに家屋が無く、夜も更けているのでしんと静まり返っていた。


天空についてあやも屋敷の中に入る。廊下を挟んで北側には武器や忍び道具を収納してある部屋や座敷牢などもあった。
一番奥の部屋へ行く。天空は部屋に入るとすぐに庭に面した襖を開けて外がよく見えるようにした。空には白銀の月が輝いている。

あやはいつも里でそうするように廊下で跪いて命令を待つ。そんなあやを見た天空は武器や額当てを外しながらあやのいる廊下まで来ると、手を引いて部屋に入れる。
「俺とお前しかいないんだから、そんなのはいい。」
と言ってあやを座らせる。

天空は忍者の装束を脱ぎ、身に付けていた武器を全て外す。褌一枚になると、あやの方へ向いて軽く腕を広げて「ほら、安心しろ」と何も持っていないこと確認させる。別に武器が無くてもあやを殺すことは造作も無いが、天空はその意思がない事を見せた。

そして、背を向けると、近くに用意してあった生成りの浴衣の襟を手に取る。ばさりと振り拡げ、鍛えられた背中にふわりと羽織った。後身ごろの右側だけ裾から肩に向かって黒で描かれた昇り龍の柄。濃茶の帯も同じように広げると、縁側に歩きながらその帯を腰に巻く。あやは天空のこの一連の動きにしばし見惚れた。月明かりに照らされた天空の背中はまさに龍のようだった。思わずため息が出るような美しさ。天空が人を殺める忍びでなければ心を奪われたかもしれない。と、あやが思う位は。充分に。

天空は縁側に出て胡坐をかくと、あやの方を向いて手招きをする。

「あや、こっちへ来い。」
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