水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第11章 ※天元か天空か
自分の考えを伝えて死ねるならまあいいかと思ったその時、天空は、首に掛けた手をぱっと離す。あやの身体はずずっと木の幹を背中にしたままずり下がる。あやは大きく息を吸い、呼吸を整えた。
天空は怒っているというよりも呆れている様子であやの息が整うのを待っている。
「・・・困った女だ。決意は固いようだが何があった?仕方ない。一旦帰るぞ。」
あやを見下ろしながら低い声で言うと里に向かって走り始めた。
あやは内心驚いていた。勝手に任務を放棄した自分を殺さなかったことにも、その理由を問われたこともこれまででは考えられなかった。
逃げても無駄なので、慌てて一緒に里に向かう。あやが走り始めたのを見て、鴉は静かに天元の所へ飛んで行った。
天元は、あやの鴉からあやは黒い服の大男に連れられて行ったと報告を受けた。慌てて、鴉の首に巻かれた手紙を読む。天元は、内容を見て一瞬手紙を握りつぶそうとしたが、留まり、額に手をあてて目を閉じる。チッと舌打ちをすると、大きく息を吸ってゆっくり吐くそれを数回繰り返して心を落ち着ける。
「・・・来るのは明日じゃねぇのかよ。」
あやをみすみす里へ行かせてしまった自分が悔しかった。あやがすぐに屋敷に来たがらなかったのは自分のせいで嫁達が危険に晒されるからだ。
あやを追いかけて屋敷に嫁しかいない状態にするのは不安だし、そうさせないためにあやは行ったのだから、もうできることはあやが帰ってくるのを待つことだけだった。
天空が・・・あやを殺さないでいてくれるのを祈るしかできない。
母親の形見を持たせるくらいだし、あやに対する態度を見ると気に入っていたようなので、すぐには手を掛けないと考えたいが・・・