水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第11章 ※天元か天空か
天空の声は徐々に怒気を孕む。
「・・・すみません。」
その時、天空の背後に鬼が見えた。次の瞬間、天空は肩を押さえる手を離し、鬼に向かってクナイを投げた。鬼の眉間と心臓に当たったが、すぐに傷が回復する。
怒った鬼が駆け寄って来る。
あやが刀に手を伸ばそうとした次の瞬間、鬼の首が転がり、ボロボロと崩れる。天空の手にはあやの刀があった。
瞬きはしていない。少し視線を動かしただけだった。でも、天空の動きは見えなかった。
「よく切れる刀だな。へぇ・・これで斬れば鬼は消滅するのか。」
天空が静かな声を発してあやに向き直った時には刀は鞘に収まっていた。
そしてまたあやの瞳を覗き込んで言う。
「あや、天元暗殺の敗因を述べてみよ。」
あやはもう言うしかないと覚悟を決め、天空の瞳を見据えて言う。
「天空様。・・私は、人を殺すことが嫌になってしまいました。」
「・・・は?」
天空は片方の眉尻をピクと動かした後、眉根を寄せてあやを見た。額に血管が浮く。
「もう、人を・・・殺したくありません。」
言い終わるかどうかの時には、天空の右手はあやの首を掴んでいた。あやの足は地面から2寸ほど浮いており、木の幹に押し付けられている。まだほとんど手に力は入っていないが人差し指と親指は頸動脈に当たり、あや自身の重みが指にかかる。その重みで徐々に動脈が圧迫されて顔が熱くなっていく。
淡々と尋問は続く。あやはもう隠すことも誤魔化すこともせずに正直に答える。
「戦いもせずに、失敗ということか?」
「はい。もうこの手に暗殺の武器を取ることはできません。」
「天元に絆されたか?」
「いいえ。しばらく前から考えておりました。もう誰も手に掛けたくありません。」
「それはどういう意味か分かっているか?」
「はい。」
「今ここで死ぬという事でいいな?」
「はい。今まで大変お世話になったのに、ご期待に沿えずすみません。」
天空の指先に少し力が入る。あやの瞳は天空の瞳を捕らえたまま逸らさない。