水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第11章 ※天元か天空か
あやは予定通り任務に向かった。指示された山に着くと状況を把握するため用心深く邪気の強い所を捜す。
すぐに鬼を見付けたが、一体ではなかった。
鬼の力はあやよりも少し下で、負けはしないが、同じ様な力の鬼が山中に何体もいた。
少し時間がかかりそうだと判断したので、他の数名の隊士と手分けして山中を駆け回る。あやは3体程倒し、さらに山奥に逃げた鬼を追う。
昨夜の満月から一日経った今宵の月もほぼ丸く、明るい夜だった。
あやは月明かりで自分の影が落ちるのを見ながら走っていく。
ふと鬼とは違う気配がした。慌てて止まり、辺りを見回すと天空が音もなく背後に立っていた。
「・・・天空様。」
来るのは明日のはず・・・。
聞こえてしまうと思ったが、動揺して少し鼓動が速くなった。天空に向き直り、静かに刀を鞘に納める。
「あや、・・・何で鬼狩りをしている?」
天空は無表情のまま低い声であやに問う。さっきまで気にならなかった風の音と葉擦れの音がいやに大きく聞こえる。
何と言おうか考えたが、咄嗟に良い答えが浮かばない。
「鬼狩りの命令がでましたので・・・。」
自分でもこの答えは間抜けだなと思いながら答える。が、これが事実だ。変に隠すと怪しまれてしまう。
天空の漆黒の瞳があやの瞳を見ている。怒っているのだろうか。空気がピンと張り詰める。天空が動かないのであやも身じろぎできず、呼吸をすることも憚られ、鼓動が耳に大きく聞こえた。背中にジワリと嫌な汗が浮いてくる。
あやは、ついにぱちりと瞬きしてしまった。目を開いた時にはすぐ背後に木の幹があった。天空に両肩を掴まれ木に押し付けられていた。背中に幹が当たった感触は無いが確かに押し付けられている。
「あや、鬼を狩るのはしなくとも良いと言ってあったが?」
天空の淡々と話しながらも追い詰められていくような問いに言葉が詰まる。押さえられた肩はびくともしない。
「・・・すみません。命令がでましたので、行かないわけにもいかず・・。」
天空の表情は変わらず、尋問が続く。
「お前、殺せと言った天元は殺せずに、しなくていい鬼狩りはするのか?」