水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第10章 天満月
あやは少し驚いた顔をしたが、くすっと笑って答える。
「天元様。ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。・・・そう言われると嘘は付けませんね。」
「それが狙いだからな。」
天元はにやりと笑い、「じゃあ少し寝るぞ。」と、あやを抱えて布団に行く。
抱えられた時にあやは空を見た。暗かった空はもう明るくなっている。薄紫だった月は、もうすぐ昇り始める太陽の光を受けて白銀色になり、代わりに空が赤紫色になっていた。
「これならいいだろ?」とあやは天元に後ろから抱きしめられる体勢になり、布団を掛けられる。あやは何がいいのか良く分からなかったが、天元様に何やら心遣いさせていて申し訳ないと思っていた。
天元は軽く曲げた二の腕にあやの頭を置いて腕枕をする。あやの頭上には天元の呼吸が聞こえる。天元はあやの腕に自分の腕をかぶせ、胸の下あたりに下ろした。筋肉が多いからか天元の身体は暖かく、あやはそのぬくもりと腕の重さで安心した気持ちになった。
ふと、天元が何かを思い出し、話し始めた。
「なぁ。昔、まだ小せぇ頃に、こうやって寝たことなかった?なんか洞窟かなんかの訓練で。暗くて怖いってぴーぴー泣いてたけど、・・・須磨じゃなくてお前だったよな?」
あやはくすくすと笑いながら答える。
「私です。私、まだあの頃泣き虫だったんです。勿論覚えています。‥あの時、天元様先に寝ちゃったんですよ!」
「そうだったっけ?」
「お陰様で今でも洞窟は苦手です。」
「今度一緒に行くときはお前が寝るまで待っとくぜ。・・・でも、今日はもう駄目だ・・ほっとした。少し寝るぞ。」
「はい。お休みなさいませ。」
連日ほとんど寝ていなかったであろう天元はすぐにスウスウと寝息を立てた。
(私はあの洞窟の時にあなたを好きになったんですよ。朝までずっと私が怖がらない様に抱きしめてもらったんです。)
あやは、そう心の中で呟いて、ふふと笑った。