水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第10章 天満月
「・・・それともお前、天空が好きで一緒にいたいのか?」
あやは眉尻を下げて少し困ったような顔になった。
「好きかどうかはわかりませんが、大切にはしていただきましたし、好意を寄せられて嫌な気はしませんでした。でも、一緒にいるという事がこれからも忍びとして人を殺すという事になるなら、・・一緒にはいられません。ましてや、子を産むだけの道具になるのも嫌です。産んだ子を人殺しに育てるのも・・。」
「じゃ、やっぱり俺と来い。俺を好きでいてくれたこともあったんだろ?」
「・・今でもお慕いしておりますよ?」
あやは、にこっと悪戯っぽい笑顔を作って天元の顔を見る。
あやは、天元が自分を殺さない道を選んだことに納得いかなかったが、自分が生きることを望んでくれているのは嬉しかった。
そしてこの議論は自分が「承知しました」とならなければこのまま平行線を辿ると気づいたので、一旦引く。
「じゃあ・・・いいじゃねぇか。・・・決まりだ。」
天元は、あやの笑顔を見て嬉しそうに笑い、ぎゅっとあやを抱きしめる。
あやも天元の背中に腕を回し、ため息交じりに「天元様は本当に・・優しすぎます。」と呟く。
天元はそれを聞いて、体を離すと「お前は俺のそこが好きなんだろ?」とにやりと笑いながら言う。そして軽く目を閉じながら唇を重ねようと顔を寄せる。あやはすっと天元の唇を自分の掌で塞ぎ、一瞬目を丸くした天元に言う。
「天元様をお慕いしておりますが、ちょっと気持ちの整理を付けても良いですか?さっきまで天元様に殺されると思っていたので、気持ちがついてきません。」
天元は口元からあやの手を取り、にやりと笑う。
「・・・いいぜ、事を急いて悪かった。いい女に焦らされるのは嫌いじゃねぇよ。・・・じゃあ、今日はこれで我慢するぜ。」
と言うと、あやの頬にちゅっと口づけをし、顔を離すと、あやの目をじっと見つめて言う。
「あや、もう俺はお前の言う事や、やる事の裏の意味を考えることは辞める。もし、これまでの事も今日の会話も全てお前のくノ一の技なら・・・・術中に嵌ってやる。天晴だと思って命もくれてやる。・・・俺はこれからお前を全て信じるからな。」