水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第10章 天満月
天元はあやに握られた手を解き、掌であやの頬を包んでから目を見つめて尋ねる。
「・・・あや・・・・頼むから、俺の質問に正直に答えてくれ。・・・・俺の妻達の暗殺命令は出ているか?」
「・・・出ていません。今出ているのは天元様だけです。」
「お前、この前俺に子がいるか聞いただろ?」
「はい。」
「俺は馬鹿正直に答えちまって、俺の妻はみんな妊娠してねぇけど、本当に暗殺命令出てねぇの?」
「・・個人名を特定せずに、妊娠の可能性ありで報告してしまいました。」
「何で?」
「わかりません。もう人を殺すことに関わりたくありません。」
少し微笑んだあやはどことなく清々しい表情をしていた。
その顔を見て、天元も腹を括る。
「・・・あや。お前、俺と一緒に来い。」
あやは天元の顔を見て動きが止まるが、頬を包む天元の手を頬から剥がすと、首を横に振る。
「同情なら必要ないです。天元様はお優しいので迷われているなら、私が自分で死にますから。」
天元はもう一度あやの頬を掌で包み、顔を近づけて言う。
「そんな事させねぇ。同情じゃねぇ。里にも戻らなくていい。今のまま鬼殺隊を続けりゃいい。いや、嫌なら鬼殺隊も辞めていい。俺の屋敷に来い。嫁が三人でも四人でもさほど変わりゃあしねぇ。」
「・・追手が参ります。」
「俺が追い払う。」
あやは眉根を寄せて、もう一度ゆっくり首を左右に振り、また天元の掌を剥がす。
「・・・天元様。判断が悪うございます。」
「私まで守ろうとすれば皆を危険に晒します。私が天元様の屋敷に行くと里がきっと嗅ぎつけます。」
天元は、微笑みながらあやの手を握り、諭すような優しい声で言う。
「あや、俺は、もう・・・そういう考え方はしたくねぇ。人殺しが嫌で里を出たんだ。・・・あや、自分のせいで皆を危険に晒すって思ってんなら、・・・お前ももっと強くなれ。それができなかったときに死ぬことを考えようぜ。俺はもう決めた。」