水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第10章 天満月
天元は少し体を離すと、寝間着の襟を肩が出るように引っ張って開き、下にずらす。そして肩にも数か所同じ跡を見付ける。背中一面にある事を予測していたので、若干安堵する。
あやの顔を覗き込んでもう一度聞く。
「あや・・・。どうしたこれ?鞭で打たれたんだろ?」
あやは覗き込まれた瞳をじっと見て答える。
「・・はい。」
「何で?何の罰で?滅多に鞭打ちなんてやんねぇだろ?」
「言いたくありません。」
天元は抱えていたあやを下ろして、前に座りなおす。
「・・・あや・・・・・俺が須磨を連れて逃げたせいか?」
「・・・・いいえ。」
「あや、俺に嘘は通用しねぇよ。耳が良いの知ってんだろ?急にすげぇ心臓鳴ってんぞ。・・・その傷は俺のせいだな?」
あやは見つめてくる天元の瞳から逃れるように目を伏せて、観念したように言う。
「・・・・・そうです。」
天元はあやをがばっと抱きしめる。
「あー・・すまねぇ。痛かっただろ?」
天元はまたはっと何かに気づき、抱き締めた体を離して、恐る恐る聞いた。
「・・・・あや・・・・親父さんももしかして?」
「父は任務中の事故で死にました。」
「へまするような親父さんじゃねぇだろ」
「・・・・・。」
覗き込んだあやの目には涙が溜まってきた。
「あや!いいから言え。」
「・・・・あの日、たくさん殴られたせいで利き腕がうまく使えなくなり・・・。」
あやの目に溜まった涙はとうとう溢れ、頬を伝って落ちる。
「・・・あや。・・言葉が見つからねぇ。・・・。」
天元の声は震えていた。そしてまた深い溜息。
あやは涙を掌でぐいぐいと拭き、スンと鼻を鳴らすと表情を戻して天元の手を握って言う。
「天元様が気に病む必要は無いです。私は天元様がどうして出ていかれたか知っています。父はずっと天元様が忍びの里から須磨を連れて出して下さったことに感謝しておりました。」
「でも・・・天元様、お願いですから、このことを須磨にだけは言わないでください。」