水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第10章 天満月
天元は大きくため息をついて、あやをそのままの形で持ち上げ、胡坐をかいた膝の中にすっぽりと入れた。そしてまた背中から抱き締める。天元はあやの腕の上に自分の腕を乗せて、あやの手も自分の掌で包む。
あやの身体は天元の大きな体で隠される。あやが天元の顔をふいと見上げると天元と目が合う。
急に天元はすりすりとあやの頬に頬ずりをしてきた。
「ふふふ。天元様、犬みたい。」
「・・・。」
天元は何も言わず、胸の下に回した腕にぎゅっと力を込めた。
その時チャリ・・とあやの胸元から、里を出る時に天空に貰った小さな袋が落ちた。
天元は少し驚いた顔で拾うとあやに尋ねる。
「これは?」
「天空様が里を出る時に下さいました。」
「これを?空が?なんて言って?」
「魔除けの黒水晶だと。」
「それだけ?」
「・・何かあるんですか?」
天元はゆっくり一つ深呼吸をすると自分の袂から色違いの袋を出した。そしてあやの胸の前に掌を上に向け、袋を二つその上にのせてチャリと中身を出す。
天空の袋からは7分程の大きさの丸い黒水晶と一寸程の紫水晶の原石。
天元の袋の中に今度は7分程の丸い紫水晶と一寸程の黒水晶の原石。
「お二人でお揃いなんですか?」
あやは天元の顔を見上げながら尋ねる。天元はあやの顔を見て微笑み、掌に視線を戻して答える。
「そうだ。・・・これは・・・俺達の母親の形見だ。丸い方はそれぞれの瞳の色に近いものを選んだって言ってたな。」
「・・袋、擦り切れてるだろう?空も俺も肌身離さず持っとけって小せぇ頃から言われて、実際そうしてた。これは・・母親からの思い出せる唯一の愛情だ。」
「・・・・。」
「・・空は、・・お前の事を大切に想っていたんだな。」
良かったらまた大事に仕舞っといてくれ。と言いながら天元は水晶を袋に入れてあやに渡す。あやはじっと渡された袋を見ている。
「あー・・俺、あの時、空を揶揄って悪ぃことしちまったなぁ。」
天元は、自分の発言を少し後悔した。天空にもちゃんと人を想う心があった。・・・いや、どうして無いと思っていたんだろう?隠していただけだった。と。いつから空はあんな風になったのか・・・思い出せないが。