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水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】

第10章 天満月


家を出てから五日目の寅の刻が近づく頃に、やっと任務から解放され、あやと天元を含む5人の隊士は、近くの藤の花の家に泊めてもらうことになった。

夜も更けていたが、藤の花の家の方達は丁寧に迎えてくれ、すぐに夜食と風呂が用意された。
お風呂に順番に入り、順次部屋で休む。女の隊士はあや一人だけなので、少し離れた部屋に一人案内されていた。
あやは、風呂を頂いた後、寝間着になり寝る支度を整えた。そして部屋の中で武器を隠すならどこが良いか考えていた。おそらく、天元がもうすぐ来る。自分を殺しに。それに備えなければと。

あやの力など必要ない任務に無理矢理同行させたのも、あやを一人で家に帰らせないためだ。
あやを一人にすると嫁を暗殺に行くと予想しているのだ。
天空が来た日は屋敷の周りであやの動向も見張っていたはずだ。天元は、天空が思った以上に早く姿を現したので、あやの存在が楽観視できないと考え始めている。
でもそれはあやも同じで、天元の暗殺命令が出たので、向こうから傍に寄って来るのは好都合だった。

首を斬らなくても、脊髄や脳、難しいだろうが心臓を狙えば少量の毒でもなんとかなるかもしれない。



・・・はずだったが、あやは人を・・・天元を殺すことを考えている自分がどんどん嫌になっていた。もう人を殺す事を任務として割り切れない。相手が天元だからか、誰に対してもなのかは分からないが、手は止まった。

あやは暗殺の仕込みは途中で辞め、寝間着の下に着ていた鎖帷子も脱いだ。今日はもう必要ない。と。

とん、とん、とん。と、わざと足音を立てて縁側に出て、真ん丸な月を子供の様に膝を抱えて見上げる。

月の中に兎が見えるような明るい明るい夜だった。幼い頃から満月は任務が無いことが多く、家族がみんな一緒に居られるので好きだった。
無邪気にただ好きなだけだったのが、大きくなってくるにつれ、このまま朝が来なればいいと思いながら見る月になっていった。

他の忍びもそう思うのか、満月の夜に外に出ると月を見ている仲間によく会った。
そうやって一緒に月を見た仲間は、もうほどんといなくなってしまったけど。
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