水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第9章 2人の来訪者
抱き締められながらあやはこの天空の表情と行動がどういうことか考える。・・・もしかして天空様は私に会えて嬉しいのだろうか。と。
あやはほんの少し戸惑ったが、そっと天空の背中に腕を回してみた。あやの掌が天空の背中に触れると、天空は抱きしめる腕に少し力を入れてくる。
あやは、これ以上は気付かない方が良いと感じ、天空に声を掛ける。
「天空様、・・・遅くなりましたが、お子様のご誕生おめでとうございます。」
天空は体を離すと少し眉間にしわを寄せ、あやの頬を両手で包んで見つめる。
「あや・・・。お前に会いに来ているんだから、他の嫁の話はしなくていい。」
天空は少し口を開けてあやと再び唇を重ねようとしたが、寸での所で止まり、視線を横に向けるとチッと大きく舌打ちをして顔を離す。あやも天空が向けた視線の先を見ると、ふわりと天元が姿を現した。天元も何の音も気配もしなかった。
「天元、お前、趣味が悪いのは知っていたが、覗き見まで始めたか。気色悪いな。」
先ほどまでの柔らかい表情が一瞬で怒りの表情に変わる。額には蚯蚓の様な青筋が立っている。ざわざわざわと辺りは殺気を帯びてくる。
「・・空、お前でも女の前ではあんなに優しい顔すんだな。驚いたぜ。」
天元の方は頬杖をついて涼しい顔で天空を見ている。
天空はゆらりと立ち上がりながら「お前は手を出すなよ、邪魔だから。」と、あやに言い、少し離れて天元の方へ向く。
「天元・・・お前は相変わらず俺が腹立つことしかしない。」
空気がぴんと張り詰め、寒くは無いのにあやの背筋はどんどん冷たくなっていく。
「お?お前が裸になってから出てきても良かったんだぜ?優しいお兄様だろ?」
天元は頬杖をついたまま天空の顔を見上げる。