水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第9章 2人の来訪者
天空の口元は少し綻んでいる。次の瞬間あやに抱き付いてきた。
天空は動きの全てに音が無い。そして動き始めるとあやは目が離せなくなる。速い動作なのだが一つ一つが何故かゆっくりに見える。蛇に睨まれた蛙の気持ちとはこうだろうか。動きはちゃんと指の先まで見えていて、どう動くか大体の予想は付くのに体は動かない。
気が付くと触れられていたり、今みたいに腕の中にいたりする。
「あや、一年ぶりだな。前にお前がいた家は何だ?虎でも飼っているのか?顔を見に行っても殺気で塀から中に入れなかったぞ。」
そう言うと、天空は回した腕に少し力を込め、あやのぬくもりを確認するようにゆっくり数回深呼吸をした。あやは、確かに煉獄家には虎が二頭いたと心の中で考えた。取り敢えず、来てくれた礼を言う。
「天空様。顔を見に来て下さってありがとうございます。」
天空はそれを聞いて一つ息を吐くと、体を静かに離す。漆黒の瞳があやの飴色の瞳を見つめる。漆黒の瞳は心なしか少しだけ潤んで揺れていた。改めて見ると、一年振りの天空は天元と同じ位体躯が大きくなっており、顔つきも男らしくなっていた。
「あや、顔を良く見せろ。」
天空はそう言うと、目を少し細めて唇は微かに弧を描く。
あやは久し振りの天空の表情が柔らかすぎて少し戸惑う。天空は、人差し指を軽く曲げてあやの顎を上げ、顔を寄せる。
「あや、どうした?俺の顔を忘れたか?・・・お前は見ないうちに・・いい女になったな。」
と言うと、ちゅっちゅっと口付けを始めた。
そして小さくふっと笑うともう一度あやの体を抱きしめる。