水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第9章 2人の来訪者
あやは初任務で鬼を倒したことで、階級はすぐに庚になってしまった。
杏寿郎は
「こんなに早く階級を上げるとは、喜ばしいことだが、・・・あやが良ければまだ離れにいてもらっても構わないぞ。」
と言ってくれたが、これ以上迷惑を懸けるのは申し訳ないので、最初の約束だったから、と煉獄家を引っ越すことにした。
といっても、夜、風呂に入ってから寝るまでの場所が変わるだけで、朝早く煉獄家へ行き稽古をし、夜は夕食を頂いて帰る話になっている。
あやは煉獄家の三人に丁寧にお礼を言い、本当は初めての紫天城家の屋敷に荷物を運んで引っ越した。杏寿郎も家の位置を確認するために荷物を運んでくれた。「何かあったら鴉を飛ばしてくれ!」と言い、すぐに走って帰った。あやも、荷物を簡単に整理すると、午後の稽古の為に煉獄家へ向かった。
あやの住む屋敷は、煉獄家ほどではないが敷地内に道場があり、広めのものだった。
煉獄家での稽古から戻ると、屋敷の中を簡単に掃除した。勝手に住ませてもらうので仏壇は丁寧に掃除し、手を合わせておいた。
引っ越しの日の夜。
あやは風呂に入り、庭が良く見える部屋を自室として寛いでいた。襖を開けて庭をぼんやりと眺める。
あやは先日の天元との会話をゆっくりと思い出す。
ずっと聞かない様にしていたが、人をこの手で殺すのはもう嫌だと心が叫んでいる。もう人を殺す位なら自分が死んだ方が良い。以前、天空様が言っていた、「弱い奴はどうせすぐ死ぬ」というのはこういうことも入るのか・・自分は安易に死ぬこと考えてしまう。ということはまだ弱いのだろう。
・・・もし、死ぬ場所を選べるなら、杏寿郎殿や天元様と一緒に鬼と戦いながら死にたい。誰かの為に死ねるのは今の自分にとっては贅沢なことだ・・・・。
・・・もっと強くなれば・・自分も死ななくて、人を殺す命令も聞かなくて済むのか?天元様のように?
あやは、急に庭に気配を感じた。ばっと視線を送り、何もいないのを確認して顔を戻すと目の前に天空が座ってこちらを見ていた。何の音もしなかった。
「あや、よく気づいた。感覚が鋭くなったな。」