水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
「・・・・・あや。やめろ。そんな気は無ぇよ。」
天元はそう言うとあやの肩を掴み、振り返らせる。
「・・・よろしいのですか?後悔しませんか?」
あやは、また体を正面に向けて天元の瞳の奥を見上げる。一番紫の濃い部分の奥の炎はゆらゆらと揺れていて少し迷っている様だった。その迷いを悟られまいとしたのか、天元はにやりと笑い、ぱちっとゆっくり瞬きをして言う。
「きっとお前を殺す方が後悔する。」
(・・・今は・・な。)
「天元様はお優しい。私は天元様のそういう所を本当に愛おしく思います。」
(殺す気はありそうだけど、・・・何を待っているのだろう?私の任務の全容か?)
「そりゃ嬉しいね。・・・で?あや、お前は?俺の暗殺の任務を遂行してみるか?俺を殺すなら・・・硬ぇだろうが、一思いに首か?・・毒だと・・俺は目方があるから、かなりの量が無いと死なねぇぜ。」
(本当に俺の暗殺命令は出ているのか?)
天元はどうせ狙いはしないだろうと思いながらも、詰襟の釦を3つばかり外し、ぐいと首と胸元を出してやる。
天元の方もあやの瞳を見つめてその奥を見る。天元を見上げるあやの瞳は揺れていない。心音も穏やかだ。
あやは天元の反応を楽しむ様に微笑んで、一応首にそっと手を伸ばして触れてみる。
冷たい指先で、ほんの少し喉仏に触れるだけ。
「大人しく私に殺されてくださいますか?」
(・・あと少し近づいたら殺される。爪の毒では少なすぎる・・・今はまだ焦る必要は無い。)
「・・・どうだろうなぁ。」
(こりゃあ。暗殺命令はまだ出てねぇな。まぁ。あや1人じゃ無理と判断してるんだろう。じゃあ・・そろそろ空が来るな。)
「冗談です。天元様の命はもう人助けの為の命ですので奪えません。」
(今は・・・ですが。)
あやはすっと手を引っ込めて後ろに組んでから天元の顔を覗き込み、笑って見せる。
「そりゃあ、あやも今は人を救う命だろう?」
天元は、はーっと大きく溜息をついてあやを抱きしめる。あやも天元の腰に腕を回す。
「俺が・・・お前を殺したいわけねぇじゃねぇか。」
「天元様、それは私もです。」