水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
天元は繋いだ手を離す気になれず、にぎにぎと握ったり、指と指を絡めたりしながらふと思ったことを聞いてみる。
「お前、鬼狩りは忍びの任務に入っているのか?」
あやは、天元の顔を見て、しまったという顔で笑いながら言う。
「・・・入っていません。するなと言われています。こんなに怪我をしながら本気でやってたら怒られるかもしれません。」
「でも、杏寿郎殿があの笑顔で『頑張れ!』と言って送り出してくれるのを手ぶらで帰るわけにもいかず・・・。」
「あー確かにな。・・・想像つくぜ。」
天元はそう言えば・・と続ける。
「・・・お前、さっき任務が終わった後に煉獄に鴉を飛ばしただろう?」
「はい、お気づきでしたか。」
「俺に殺されない様に、見えるように鴉を飛ばせって言われたんだろ?」
「・・・はい。そこまでお分かりですか。」さすがです。と笑いながら言う。
「・・馬鹿にしてねぇ?」
天元はわざと怒った様な顔をして見せる。あやは、それを見て微笑み、天元が握ってくれている手をぎゅっと握り返した後、そっと離して立ち上がり、深々と頭を下げる。
「・・・してません。・・・・それでは、天元様、良い頃合いです。楽しい時間をありがとうございました。・・・どうぞ。今日の内に決着がつけたいならどこでも。」
「体に傷をつけると杏寿郎殿に勘付かれて責められるでしょうから、急ぎでないなら・・毒か何かを飲みましょうか?渡していただければ、次の任務中の事故に見せかけて飲むこともできますよ。」
「姉と天元様が元気なことが分かったのでもう充分です。」
(さぁここで天元様がどう動くか。もし殺す気なら・・・死ぬしかない。)
と、あやは静かに天元の前に立ち、腰の刀や体中に装備しているクナイや小さな刃物などを天元の前に差し出す。全てを外し終わると両手を広げて背を向ける。