水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
(でも、その時が来たらやるしかない。)
(・・・3人の嫁は死なせねぇ。)
(・・・私は・・・何のために?天空様?ご当主様?忍びの里?・・・それって本当に聞かなきゃいけない命令?)
お互いの体温を感じながら少しの間沈黙が流れ、あやと天元は体を離す。
すると、あやの鴉が飛んできてあやの肩に留まる。
「あやガオソイカラ、杏寿郎ムカエニクルッテ。」
あやと天元は「え?」と慌てて目を合わせる。
「・・・おい、あや、走って帰れ。お前、俺と仲良い所見られたら困るだろ?俺もこんなに引き留めてたのが見つかると今度は手首位じゃ済まねぇかもしれねぇ。」
「はい。・・・では失礼します。」
天元はあやの走っていった方をしばらく見ていた。見えなくなっても視線はそのままであやのぬくもりが残る手をぐっぐっと開いたり閉じたりしながら微かに笑う。
「いい手ごたえだ。ありゃ心がかなり揺れてるぞ。」
もう少し時間があれば・・・あやの里に戻ろうという気を失わせることができそうだ。
あやは途中で出会った杏寿郎と煉獄家へ帰った。
天元が傷を治療してくれたというと、少し複雑そうな顔をしていたが、無事に鬼を倒したことをとても喜んでくれた。
部屋に戻り、里の天空に手紙を書いた。
天元の今の武器と戦い方、子どもがいない事。
・・・・天元の様子だと奥方は妊娠していないと分かっていたが、それを伝えると暗殺命令が出た際に生け捕りにする意味が無く、三人とも殺されてしまうので、『不明・可能性あり』としておいた。報告に嘘を混ぜたのは初めてだった。