水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
「じゃあ、鬼を斬ってみてどう思った?」
「死体の処理をしなくてよいので楽だと思いました。」
あやは正面を向いたままふっと悲しそうに笑う。天元はその様子をチラと見て、また正面を向く。
「・・あぁ・・俺も最初に鬼を斬った時にそう思った。」
あやは、続ける。
「手に付いた血がなかなか落ちず、忌々しいと思いながら流すことも無く、腕の中で力が抜けていく様子を見ることも無く、すがりつく家族の泣く声を聞くことも無く、死んでいく人の無念さやこの人を失う家族や友人の悲しみを想うことも無く・・。」
言いながらあやは泣いていた。天元はあやの手を握る。
「その通りだ。忍は罪深ぇ仕事だよ。」
「鬼を斬る方が人を斬るよりよっぽど気が楽ですね。」
「確かに、人を斬るような罪悪感はねぇな。」
天元は少しの間、あやが泣き止むのを静かに待った。
あやは、泣き止むとすうっと息を吸って言う。
「東京に来てからの日々は幸せすぎて、里でのつらい生活が嘘の様でした。」
「煉獄はいい奴だからな。」
「はい。太陽の様な方で驚きました。・・・こちらに来てから、天元様が鬼殺隊になられた気持ちも少し分かった気がします。」
あやは穏やかな表情で天元に問う。
「・・・天元様、姉は元気でしょうか?」
天元は少し困った顔で答える。
「・・・あぁ。相変わらずよく泣いてるぜ。毎日飽きもせず他の2人とぎゃあぎゃあと煩くやってる。」
「そうですか。嬉しい限りです。」
「天元様、ご子息はお生まれに?」
「いいや、作ってねぇ。鬼殺隊はいつ死ぬか分からねぇからな。状況を見て考える。・・俺は、自分の事があんまり好きじゃねぇから…子は作らねぇかも知れねぇ。」
「空は?子が生まれたか?」
(おそらく本当の事だ。・・・子の誘拐の任務は無し。)
「…直接見てないですが、私の知る限りでは御二人のはず…。」
「そーかよ。相変わらず親父の言いなりだな。」
「気の毒なこった。」と呟くと、そういえばと思い出して尋ねる。
「・・・お前、親父さんは?」
「父は任務中に事故で亡くなりました。もうすぐ4年経ちます。」
「・・・・そうか。残念だ。里じゃあ珍しく、優しい良い忍びだったぜ。俺は何度も助けてもらった。」
「そう言って頂けると父も喜びます。」