水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
急な行動にあやは驚き、少し顔を離す。天元の頬は暖かく、すべすべしていた。
「お。悪ぃ、痛かったか。」と言うと、額当てと頭に巻いた布を外し、指先でぐしゃぐしゃと髪の毛を解す。サラリと揺れる銀の髪からは良い香りがした。あやはちらりと天元の方を見てこの銀の髪は懐かしいなと思い、ふっと口角を上げる。そしてついでにあやの好きだった紫の瞳も覗き込む。
「天元様、お久しぶりでございます。益々のご活躍心よりお喜び申し上げます。」
天元の目とあやの目が合い、少し間を置いてお互い微笑む。
「なんだ?あやのくせに畏まって。普通に喋れ。」
天元は昔の様な悪戯っぽい顔であやを見て、脇腹をくすぐる。
「・・・きゃ・・天元様。やめて・・・ふふっ。」
笑いながら身を捩り、天元と少し距離を取る。
天元は少し開いた距離をあやの腰を持って引き寄せて縮める、そしてまた顔を覗き込んで頭を撫でながら言う。
「可愛い顔で笑うじゃねぇか。」
あやは「天元様は、変わりませんね。」と笑いながらちらりと天元の目を見返す。お互い目が合うと子供の様に嬉しそうな顔で「ふふふ」と笑う。
天元はあやの頭を撫でていた手を肩に回してまた抱き寄せる。
「あや、鬼殺隊になるの大変だったろ?」
「・・・はい。想像以上に。」
あやは視線を夜の闇に移す。天元も同じ方向を見る。向こうに聞こえていた鬼狩りの後の喧騒は、もうすっかり静かになっていた。
「・・・人の命を救ってみてどうだった?」
「これまで奪ってしまった全ての命の事を思い返しました。」
「・・・俺もそうだった。」