水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第8章 駆け引き
「腕出せよ。」
あやは静かに隊服の上着を脱ぎ、シャツの袖を捲る。
(傷を治すのなら・・・殺す気は無いのか。・・・今は。)
「殺しゃあしねぇよ。そう緊張するな。」
天元はあやの目を見て笑い、怪我をした方の手を自分の太腿の上にのせる。
すぐに腕に消毒液を掛けると縫い始めた。あやの手に当たる天元の太腿は太く硬い。この筋肉の塊に蹴られたら即死だなと考えていた。
「・・・その。この前は悪かったな。胸、痣になったろ?」
「・・・はい。しかし、もう殆ど消えました。」
天元は縫い終わった患部にガーゼを乗せ、テープで留める。
「・・・あや、お前も忍びを抜けて来たのか?」
あやは、やはり尋問が来たかと思った。天元様は耳が良いので、おそらく心音の速さで嘘は見破る。当たり障りのない様に正直に答えよう。
…おそらく、今夜天元様は自分の任務ではなく、杏寿郎殿と私が離れる好機と思ってここに来た。尋問の返答次第で私を殺す気だ。と。
「・・・いいえ。」
(これは本当)
「じゃあ、任務か?」
「はい。」
(これも本当)
「誰の指図だ?親父か?空か?」
「わかりません」
(おそらく当主様だがはっきりとは言われていない。ので、これも本当。)
天元はあやの捲った袖を下ろして、手をそっと握ると、「ほらよ」とあやの膝に乗せてやる。
あやも「ありがとうございます。」と答える。
「お前の任務は俺の暗殺か?」
「・・・言えません。」
(出ていないけど濁す、嘘はついていない。)
「俺の嫁三人は?」
「命令は出ていません。」
(これも本当。)
「・・・・じゃ、いいや。それが聞きたかった。嘘もついて無ぇみてぇだし。」
天元は急にあやの方を向いて笑顔を見せ、あやの肩に腕を回して抱き寄せ、自分の頬をあやの頬に付ける。
「おい。あや、久しぃな。元気だったかよ?大きくなったな。色っぽくなりやがって!」