水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第6章 鬼殺隊員として
「そうだ。」と杏寿郎が呟き、天元に尋ねる。
「あやは何が好きだ?最近、土産を渡すと可愛く笑うようになってきたんだ。喜ばせたい。」
「・・・笑うのか?しかも可愛く?へぇ。・・・そうだな。あやは・・・金平糖とかカステラなんかも喜んだが、可愛い練り切りなんかも好きだったな。」
「あやは、煉獄家で大事にされてんな。」
天元は「ありがてぇな。」と優しく笑いながら返す。
「・・もちろん大事だ。俺の優秀な妹弟子だぞ。君だって先日の修羅の顔と違っていい笑顔じゃないか。里では大切にしていたんだろう?」
「当たり前だ。一緒に育って、生き残った仲間だ。・・・本当に殺したいはずはねぇよ・・。」
天元が少し悲しそうな顔になるのを見て、杏寿郎は慌てて詫びる。
「・・・すまなかった。無神経な事を言った。」
「・・・いいや。お前は悪くねぇ。親父がおかしいんだ。なぁ煉獄、この際だからあやを立派な鬼殺隊士にしてやってくれ。」
「ん?」と杏寿郎が何かに気づいて聞き返す。
「宇随、・・・もしかして、逆にそこが活路か?」
「煉獄、察しがいいな。・・・親父や弟の痺れが切れるのが遅ければ、あやは無理に忍びではなく、俺と同じように鬼殺隊士として生きていく道が開けるかもしれねぇな。」
「腹を切る算段よりもそっちの方が健全で良いな。そうしよう。」
杏寿郎は帰り道にあった和菓子屋で、色味の綺麗な練り切りを選び、土産に買って帰った。
あやと千寿郎は包みの中を見て「わぁ」っと嬉しそうに歓声を上げる。急いで千寿郎がお茶を淹れて、みんなで縁側で食べた。
「・・・杏寿郎殿・・・可愛すぎて食べられません。」
とあやが嬉しそうに笑って言うのを聞きながら、杏寿郎は「鬼殺隊士として生きていく道が開かれる」という宇髄の言葉を思い出していた。それができるのであればその手助けをしたい。と。