水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第6章 鬼殺隊員として
「気の毒すぎる。」と呟くと、杏寿郎は宇髄の目を見て言う。
「宇髄。今日の本題だ。・・・・・俺は、優秀な鬼狩りではなく、とんでもない人殺しを育ててしまったか?」
天元は少し間を置くと、小さく溜息をついて言う。
「・・・なんとも言えねぇな。鬼殺の技は十分に人が殺せる。」
杏寿郎は少し上を見て考えたが、すぐに視線を天元に戻す。
「仕方ない。彼女が人を殺したら、俺が彼女を殺して腹を切るしかないな。」
「煉獄らしいな」と笑って天元は言う。
「その覚悟をぜひあやに話してやってくれ。あやはそれを聞いたらきっと人殺しはしねぇよ。俺も嫁も殺されずに済む。あいつは・・・すげぇ良い子なんだ。」
「・・・そうだ。違和感はそこだ。人殺しをしてきたようには思えない、純粋で、直向きで良い子なんだ。人の命を救いたいと俺に言った言葉に偽りがあるとは思えない。」
「・・・当たり前だ。息をするのと同じくらい当たり前に人が殺せるように教育するからな。自分が殺されないために人を殺すんだ。罪悪感が無いとまでは言わねぇが、一般人よりも殺すことに対しての抵抗は少ねぇよ。」
「・・ま、でも、あやがくノ一だと煉獄が気づいていることがバレると、あやは迷いなく死ぬがな。任務の内容と素性をばらす位なら忍びは死を選ぶ。」
「・・・そうか、ならばやはり腹を切るしか道はなさそうだな。」
「俺はそうそう殺されねぇから安心しろ。呑気に時間をかけて鬼殺隊にしているくらいだから、おそらくまだ暗殺命令は出ていないはずだ。監視がいいとこだろうな。」
「確かに、君の暗殺は至難の業だ。なるべく暗殺されるのを後にしてもらえるとありがたい。俺は鬼殺隊としてやるべきことがあるからな。・・・本懐を遂げた後なら君とあやを縛っている里に共に乗り込むこともできるぞ?」
「そうだな。地獄に落ちるなら親父も弟も道連れにしてぇしな。」
お互い顔を見合わせて「現実的じゃねぇか?」とふっと笑う。
残った酒と料理を平らげ、帰路につく。