水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第3章 最終選別
素振りの後、千寿郎殿の作った夕食を頂いた。
男の人と食事をすることは初めてで、先に杏寿郎殿達が食べてから自分も食べると思って台所で待っていたら、杏寿郎殿に「どうした?早くおいで。」と言われ、当たり前のように並んで一緒に食事をとった。
杏寿郎殿は「うまい」「うまい」と言いながらびっくりする位沢山食べた。ご飯のお代わりを自分で取りに行ったので、私が慌ててご飯をよそって渡すと、笑顔で「ありがとう!」と言う。
時折、私の様子を見ると、
「俺のことは気にせずゆっくり食べてくれ」
と心遣いの言葉を掛けてくれた。
そして食べ終わると「わははは」と楽しそうに笑いながら千寿郎殿や私の話を聞く。
私は忍びの里にいる男達と全く違うので、自分がどう振舞えばいいのか困惑した。
さらに、煉獄家で私は、杏寿郎殿や千寿郎殿に対等というよりもむしろ大切にされるのだ。好きな食べ物を聞いて作ってくれ、任務の帰りにお土産として菓子や髪飾りを買ってきてくれたこともあった。
私はこういうことに慣れていないので、いつも「ありがとう」位しか言えない。それでは申し訳ないと思い、せめてにっこり可愛く笑えるように笑顔の練習をした。
毎日の稽古もそうだった。もともと物心つく前から体力をつけ、武術の訓練も行っていたので、戦いの基本はできていた。刀で戦うのもすぐに慣れた。
それでも、杏寿郎殿の課した稽古の内容は毎日、体力の限界を超えるためのものだったので、苦しかった。
しかし、命の危険が殆ど無い上に、杏寿郎殿に「頑張れ」などと励まされる。
さらに、課された稽古が終わると「筋がいいな。」とか「よく頑張った。」とか「成長したな。」と褒めてくれる。
一度、稽古の途中で体力が無くなり、その場で倒れたことがある。目が覚めると額に水で絞った手拭いが置かれ、杏寿郎殿と千寿郎殿が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。倒れた自分が悪いと思って咄嗟に「すみません」と言うと、反対に杏寿郎殿から「悪いのは指導している俺だ。熱中しすぎてすまなかった。」と謝られた。