水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第16章 ※新月
「名前はあやです。」
「新一年か。・・もう帰るだろ?ちょっと待ってろ。俺も帰る。」
「ん?え?」
「・・・あやの友達。すまんな。あやは俺と帰る。帰ってから詳しくあやから話を聞いてくれ。いや、あまり詳しく聞かれると困るな。まあいい。じゃあな、気を付けて帰れ。」
あっけにとられているあやの友達に有無を言わさない雰囲気で言う。
「・・・あや、行くぞ」
あやは黒いウエアの人に手を引かれてグランドから出た。記録を取っていた人に「体調が悪いから帰る」と言っていた。たった今シーズンベストを出したくせに。
陸上部の部室の近くにあやを連れて来て、近くの自販機で無糖の紅茶を買ってあやに持たせる。
「着替えてくるからこれでも飲んで待っててくれ。」
と言い、急いで部室に消えた。
あやはさっきから頭に靄がかかったように思考できなくなっており、とりあえず頂いた紅茶のふたを捻って開けて飲む。
・・・無糖。普通無糖ってあげる人に聞いてから買うよね。と思いながらもごくごく飲む。冷たくて美味しかった。
「天空様・・・天空様・・・・?」小さな声で呟いてみる。
呼び慣れた名前な気がしてきた。
「天空様?・・・宇髄・・・天空・・・天空様!」
あやは、何かを思い出し、少し大きな声で叫んでしまった。
着替え終わった天空が出てくる。黒いウエアから紺色のブレザーになっていた。ブレザー姿もなかなかどうして美しい。何の変哲もない普通のブレザーだが、天空は背が高い上に手足も長く、バランスよく筋肉が付いているのでモデルのようだった。
慌ててあやに駆け寄り小さな声で言う。
「あや。お前・・だから、よせ!明日からお前も恥ずかしいんだぞ。」
顔を近づけ、あやの顔を覗き込んで言う。あやはその黒い瞳と目を合わせる。目には涙が浮かんでいた。
部室とグランドの近くという事もあり、みんなチラチラと二人を見ながら通る。
「・・・天空様。お会いしたかったです。」
「ちょっと思い出したか。・・・あや、・・・様はやめてくれ。今は一応ただの高校生だ」
微笑んであやの頭を少し撫でる。