水光接天 【鬼滅の刃/宇髄天元・弟】【中編】【R18】
第1章 ※忍びの里
半年ほど経ったある日
あやは急ぎの用があると天空に呼ばれた。
慌てて部屋の前へ行き、「天空様、参りました。」と声を掛ける。すぐに「入れ」と中から返答があった。
静かに襖を開けると、天空は部屋の中央で脇息にもたれかかりながら胡坐をかいて座っていた。
来いと手招きをするので、急いであやが傍へ行く。あやの顔を覗き込みながら口を開いた。
「あや、天元と須磨が見つかったぞ。」
とうとう見つかってしまったか、殺された話でないと良いが、とあやは次の言葉を待つ。漆黒の瞳と目が合いにやりと嗤う。
「安心しろ。まだ殺してない。」
また心が読まれたのかと思い、一瞬息が止まる。
「・・・東京で鬼狩りをしているらしいぞ。」
「鬼狩りですか?鬼とは・・・本当にいるのですか?」
「らしいぞ。時々夜の闇に人を襲う物の怪がいるだろう。あれが鬼らしい。俺達はあれには関わらんが、鬼狩りはあれを仕留めることができるんだそうだ。」
天空はここまで言うと、ふぅと大息をつき、片方だけ少し眉尻を上げ、怒ったような不機嫌そうな顔になって続ける。
「あや。任務だ。お前も鬼狩りになって天元の動向を探れ。監視下に置きたい。親父は兄が里を滅ぼしに来るのを心配している。」
「鬼狩りになるには少々厄介で、時間がかかる上に腕が立つものでないとなれん様だ。なってからは鬼を狩る必要は無い。天元を探った情報を送るのが任務だ。」
「ですが、私は顔が知られております。」
「大丈夫だ。天元は甘い男だからな。命令以外では女は殺さん。だから女がいいんだ。さらに見知った女が来ることで見張っていると牽制できる。が、万が一を考えて、事故に見せかけて殺されない様な所へ送ってやる。丁度良い所が見つかったんだ。明日出立だ。かなりの長期間の任務になる。準備をしろ。」
「承知しました。」
あやは、自室へ戻りながら最終的に暗殺の命が出ないと良いがと思ったが、自分にはどうすることもできない。出たとしたら様々な手を使ってやってみるしかない。
自分にはどんな命令でも従う以外の選択肢は無い。
まずは顔を合わせた時に殺されない様に考えなければ。