第94章 緋色の帰還3
沖矢side
安室「ええ。監視役の男はまんまと騙されたわけですよ…何しろ撃たれた男は頭から血を吹いて倒れたんですから…」
沖矢「頭から血を?」
安室「だがそれもフェイク。撃たれた男はいつも黒いニット帽をかぶってましたから、この近所にはMI6も顔負けの発明品を作っている博士がいるじゃないですか。彼に頼めば空砲に合わせて血糊が噴き出す仕掛けぐらい簡単に作れそうだ…」
沖矢「じゃあそのグルの女に頭に向けて空砲を撃てと頼んでいたんですね?」
安室「いや。頭を撃てと命じたのは監視役の男…」
☆☆
貴方side
キャメル「し、しかし…とても信じられないです…」
赤井さんがその携帯に触れたのは、水無伶奈が組織に奪還される前のこと。
おそらく赤井さんは、その時点で自分を殺せと彼女が命じられると想定していたのだ
★★
沖矢side
工藤邸
沖矢「なかなかやるじゃないですかその男…。まるでスパイ小説の主人公のようだ…」
安室「だが…この計画を企てたのは別の人物…」
男を褒め称える彼に一瞬眉を寄せ、彼は否定する
安室「そう。別の人物…。その証拠に、男は撃たれた刹那に呟いている…」
赤井『まさかここまでとはな……』
沖矢「『まさかここまでとはな……』ですか。私には自分の不運を嘆いてるようにしか聞こえませんが…」
安室「ええ…当たり前に捉えるとね…。だが、ある言葉を加えると……その意味は一変する……『まさかここまで…読んでいたとはな…』
そう…。この計画を企てたある少年を賞賛する言葉だったというわけですよ…」
沖矢「…なるほど…面白い…」
安室「…」
俺のまったく変わらない、けれど怪しげな反応に安室は目を鋭くした。マスクで表情が読めないことが、尚のこと彼を苛立たせた