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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第14章 感謝の日


煉獄さんが目を丸くしている。そして、かあっと頬を赤らめた。私の肩に置いた手を引っ込めると、何も言わずに困ったように頭をかいている。私はそんな煉獄さんを見つめた。

とても可愛い。

私は煉獄さんに対してそう思った。名前、呼んでみてよかったかも。可愛い。私の中の煉獄さんがゆっくりと恋人になっていく感覚を覚える。って何考えてるんだ、私。私は慌ててふわふわとする意識にギュッと目を瞑る。目を瞑って、暗くなった視界で煉獄さんに胸を張ってみせた。

「ど、どうですか!これが仲良くなるということです!杏寿郎さん!」

自分でも自分の言っていることがよく分からなかったが、とにかく煉獄さん、改め、杏寿郎さんの落ち着きを取り戻すことには成功したらしい。杏寿郎さんは先程までの勢いはなくなり、すっかり大人しくなった。

「…中彩は、」

杏寿郎さんが私の名前を呼ばない。私はすかさず杏寿郎さんに食ってかかった。

「あれ、私は名前で呼んでるのに杏寿郎さんは私を名前で呼んでくれないんですか!」

杏寿郎さんが口を噤むのがわかる。しん、と部屋が静まる。なんだ、この静けさは。私がゆっくりと目を開けようとすると、耳に煉獄さんの息が当たる。私は驚いてまた目を閉じてしまう。

「麻衣。」

「っ…///」

そして杏寿郎さんが耳元で私の名前を呼んだ。杏寿郎さんの落ち着いた低い声、その余韻が胸に残って離れない。こんな杏寿郎さん、慣れない。自分で言い始めたことなのに、いざ名前を呼ばれたら、動けない。

「呼んだぞ!俺と結婚してくれるか!」

「み、耳元で言う必要は無いんですよっ///」

私の両手を握り杏寿郎さんが私の目を見て真っ直ぐに言った。相変わらず真っ直ぐなその視線が一段と熱くて、つい私は目を逸らしてしまう。

「大体、なんで結婚なんですかっ…いきなりすぎます!」

「麻衣が、他の男に取られることは我慢ならないからだ!」

「なんでそうなるんですか!私杏寿郎さんのそばに居るってこの間言ったばかりじゃないですか!」

私の言葉に杏寿郎さんが静かになる。ぽかんとしている。そして少しの間の後、眉を寄せ、私をぎゅうっと抱きしめた。

「すまない、どうにかしていた。どうにも慣れない。この気持ちが分からない。君のこととなると、俺は平常心でいられない。」

杏寿郎さんが、小さく呟く。
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