第14章 感謝の日
そこには小さな小包がいくつも入った紙袋が置かれていた。俺は呆然とする。茶、緑、赤、白…色とりどりの小包が全て中彩へのプレゼントだということに気付くまで暫く時間を要した。後ろから中彩が「煉獄さんどうしたんですか」と声をかけてくる。俺はたまらず紙袋を指さし、中彩に振り向いた。
「中彩!なんだこれは!」
俺の表情に中彩の肩が跳ねる。
「えっ、なにって…ホワイトデーのお返しです。会社の人からの…今年は3月14日、日曜日だから…」
そう言って中彩が紙袋を持ち上げた。「一部あげてない人からも貰いました!」と言って、いくつものある小包のうちの一つをとって俺に見せ、あどけない笑顔を浮かべた。
「煉獄さん、半分こして食べましょう!」
俺は中彩の言葉に頭に雷が落ちたような衝撃を受けた。固まる俺に中彩は「あ、ホワイトデーというのはですね、」と俺にホワイトデーについての説明をする。俺がホワイトデーを知らないものだと思ったのだろう。だが、無論俺はホワイトデーを知っている。斉藤少年から聞いたのだから。そして俺も中彩に菓子を購入していたのだから。
「煉獄さん?どうしたんですか?どこか調子悪いんですか?おーい」
俺は、中彩と恋仲になれたと、何を浮かれていたのか。一つ、重要な可能性を見落としていた。中彩にいつ別の男が言い寄ってきてもおかしくないということを。またいつあの島田とかいう鬼のような男が中彩をたぶらかすかもわからん。中彩の仕事場には男が多くいるのだろう。俺は中彩の肩に手を置く。
「中彩!!!」
「えっ!はい!?」
俺は息を吸った。俺の様子に中彩が心配そうに、こちらを見ている。俺も中彩の目をまっすぐと見据える。やはり伝えるしかあるまい。猶予はない。君が俺以外の男と恋仲になることは考えることが出来ない。
「俺と結婚しよう!!!」
………
「…はい???」
ひとつの間を開けて中彩が情けなく反応した。部屋がしんと静まり返った。