第11章 ずる休みと第22話
朝の中彩は顔が真っ青だった。飯を食べてからも、中彩は元気になったと自分では言うが、どこかぼうっとしていた。やはり疲れが残っているのだろう。
「今日、道場での稽古は午前で終わる。それまで無理をせず休んでいろ。」
「こんな日に休むなんてもったいない!掃除に洗濯、やることは沢山あるので!」
「俺が帰ってから手伝う!とにかく、無理をするな!」
「平気平気です!」
道場の時間が迫っていたため、俺は中彩の身体を心配しつつも出発せねばならなかった。俺が靴を履いていると、中彩が玄関まで送りに来る。
「気をつけて行ってきてくださいね!」
「うむ、では行って参る!」
「行ってらっしゃーい!」
中彩が笑顔で手を振るのを背中越しに見ながら俺は家を出た。
道場に着くと、斉藤少年が稽古に参加していた。今日は平日だと言うのに熱心な者だ。あれから斉藤少年とは何度か斉藤少年の恋人について相談を受けたり、俺の話をしたりした。もっとも、俺から彼に言ってやれることは少なかったが。
「それで、煉獄先生その中彩さんには告白したんですか?」
「いや、まだだ。話して良い時間が定まらなくてな。」
「今度、ホワイトデーがありますよ」
「ほわいとでー?」
俺は斉藤少年の言葉に首を傾げる。ホワイトデーとは一体何か。俺はまだ知らないことが多い。
「バレンタインデーっていうのが2月の14日にあって、女の子が好きな男の子にチョコレートをプレゼントする日があるんです。これは広く色んな国で風習があるのですが、ホワイトデーは日本発祥のイベントで、バレンタインデーとは逆に男が女の子にお礼の贈り物をする日、また、気になる女の子に気持ちを伝えるチャンスの日でもあります。特に、バレンタインデーをあげていない男からホワイトデーを貰ったら、女の子は絶対意識すると思います。」
「ふむ…」
俺は考える。なるほど、そのようなイベントがあるのか。俺が中彩の元へ来たのは2月の20日。バレンタインデーは終わっていた。思えば、中彩は誰かにバレンタインデーを贈ったのだろうか。俺はホワイトデーよりもそちらの方が気になった。中彩が思いを寄せる相手はこの間の男以外にいるのだろうか。だが、ホワイトデー、良い機会やもしれん。