第2章 おはよう
「うまい!!!!!!」
「!?!?!?」
大きな声で目が覚めた。反射的に隣で寝ていた彼を見るが布団は空。飛び起きて声のした方を見ると、彼は私の昨日買ったお弁当をもりもりと食べていた。
「うまい!!!!!!」
「えっ!あの!」
彼は大きな声を上げながらお弁当を食べる手を止めない。
「うまい!!!!!!」
聞こえていない!?
「あの!!!!!!!!」
自分でも驚くくらい大きな声が出た。恥ずかしい。私の声に彼は振り向き、大きな目を見開いた。
「囚人の女!目が覚めたか!」
どこを見ているのだろう?私か?
視点が合わない相手に少々怯えながら私はゆっくりと近寄る。
「あなたこそ目が覚めたのですねというか囚人?え?」
目を丸くして相手を見ると「うまい!!!!!!」といいながら、やはりお弁当を食べる手を止めない。いやそれ昨日私が食べようと思って買ってきたけど結局疲れて寝ちゃって食べなかったお弁当!
色々言いたい言葉が浮かんだが、私はそれよりも先に力が抜ける感覚があり、彼のすぐ近くまで寄った所でへなへなと座り込んだ。
「む、どうした!囚人の女!」
「目が覚めて良かったです。それと私は囚人の女ではありません…」
彼は私を見つめた。
「ここがどこだか分かるか?見たところ牢屋のようだが。」
「牢屋じゃありません、ここは私の家です。」
「家?それにしてはあまりにも狭いだろう。」
「し、失礼な!そりゃ狭いですけど!」
私は相手の言葉に驚く。ワンルームを牢屋呼ばわりするなんてどこのおぼっちゃまなんだ!やはり危ないところの組織のご子息なのか?そうなのか?
その後、彼がお弁当を全て平らげたところで、なんだか物足りなそうな表情をした。
「もしかして、まだお腹すいてるんですか?」
「よもやよもや、囚人に気を使わせてしまったか…」
「だから囚人じゃないですってば」
私は溜息をつきながら台所へ行って冷蔵庫を開ける。彼が付いてきて冷蔵庫を物珍しそうに見つめた。だが、そこから取り出したものを見た瞬間、
「それはさつまいもか!!!」と目を輝かせた。
大きな声だったので危うく落としそうになる。
「そうですよ、もう1品汁物でも作ります。こんな物しかないですが…」
私は散らかった台所から相手を追い出し、焦げたIHを使ってさつまいもの味噌汁を作った。