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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第2章 おはよう


暖かい。ここが天国というものなのか。こんなにも暖かな明るい場所であるなら、きっと地獄ではない。母上が迎えに来てくださった、きっと天国に来れたのだろう。
あの日、上弦の参、猗窩座を追いやった後、竈門少年に言伝を頼んでから、母上の姿を見た。その後の記憶が無いが、きっと母上がお連れくださったのだ。ともかく、皆が無事で本当に良かった。

「母上……」

手を伸ばす。お身体はもうよろしいのですか。皆を見守ってくださっていたのですか。天国は眩しい。母上の姿がよく見えない。母上の声が聞こえた気がした。なんと仰っているのか、聞き取れなかった。

手を伸ばした先、視界が開け、指先は空を切った。

「……ここは」

眩しいと思っていた明かりは、外から漏れる陽の光だったらしい。俺は身体を起こす。布団だ。柔らかな毛布と掛け布団。布団に寝ていた。ぼんやりとしたのもつかの間、周りを見渡す。

何かがおかしい。見慣れない景色、暖かな部屋、見慣れないモノ達。甘い香り。

「ん……」

すぐ隣でごそごそと動くものに身を固くする。視点を動かし状況把握に努める。相手は一体。

「すー……」

女?

「よもやよもや、ここは天国ではないらしい」

布団から出、隣で眠る女を起こさないよう息を静かに移動する。皿のたまった洗い場、浴場、厠、どこか自分の知るものに似通っているが姿かたちがまるで、異なっていて、何より狭い。

「ここは牢獄で、この女は囚人やもしれん。」

10分もしないうちに一通り見回りが終わってしまった。扉がある、ここから先に出られるのだろうか。ここが牢獄であるならば、まずは外に出なければ。そう思い、下駄を探すため視線を落とすと、袋に入った弁当を見つけた。

ぐぅぅぅ

腹がなった。思えば、しばらく何も食べていない。俺は袋から弁当を取りだし、それを眺める。匂いを嗅ぐ。蓋には「半額」の文字。ぞんざいに置いてあるということは恐らく毒などは入っていないだろう。囚人に毒を与えるのであれば、その前に首が跳ねられるはずだ。食べてしまっても良いだろうか、否、俺は腹が減っていて判断の余地はない!

箸を割り、蓋を開け、飯をかきいれた。



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