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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第10章 夢の中で


道に走るタクシーを捕まえ、中彩を抱えて乗り込み、俺は行き先を告げた。この世界にもだいぶ慣れたものだ。俺は酒の回る頭で窓の外の景色が流れていくのを見る。とても眩しい街。一人で生きていこうと来たばかりの頃は思っていたが、この世界は俺が思うよりも、俺の知識が通用しない。広く、眩しく、孤独な場所であった。だが、こうして今過ごせているのも、中彩が色々と世話を焼いたおかげだ。隣ですやすやと眠る中彩に視線を移すと、俺は自然と笑みがこぼれるのを感じた。

そして俺たちは家に帰ってくる。中彩の靴を脱がせ、布団に寝かせてやる。羽織っていた服は脱がせてやった。その間中彩はうわ言のように俺の名前を呼んだ。背負っている間から俺は中彩の体温や酒の匂いに混じって香る甘い匂いに、頭がおかしくなりそうだったところに、中彩の妖艶とも取れる酔った声音も加わって理性を保つのがやっとだった。

俺は、眠る中彩を眺めた。白い肌が酒で赤く染って、薄い唇からは熱い息が漏れている。好意を寄せる女の無防備な姿に俺はしばらくの間動けなかった。

「っ…寝る!!!」

電気を消し、中彩の布団から出来るだけ距離をとって俺も横になった。体の中心が熱い。酒の酔いが覚めない。中彩が残した殆どの酒を最後に一人であおったのが良くなかったか。渦のように訪れる意識の混濁に俺は戸惑った。だが、このまま眠れる。俺は、早くなる鼓動を耳で感じながら父上はこのように毎夜過ごしていたのかと頭の隅に思った。



「……ごくさん、れんごくさん………」

ふと目を覚ますと中彩が俺の上に乗っている。俺の下半身をその手で撫で、俺の耳に熱い息を掛ける。

「れんごくさん…起きたぁ…?」

髪を耳にかけ、上目遣いで見つめる。そしてふにゃりと名前を呼んだ。

「中彩こそ、起きたのだな。心配したぞ、もう大丈夫なのか?」

俺の言葉に中彩はクスリと笑い、俺の頬に自分の頬を寄せた。

「私、おもかったですよね…?ありがとうございます…」

「そんなことはない、気にするな……」

中彩の様子がおかしい。まだ酒が回っているのかもしれない。どうしたというのだ。その間も、俺の胸を指先で撫で、熱い息を吐きながら俺の名前を呼んでいる。
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