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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第9章 暖かい風、熱い熱


「悪いが、俺との先約がある。」

「へぇ、先約ねぇ。最近麻衣から連絡が来なかったのは君が原因だったのかな。」

そう、煉獄さんが来る前、私は人肌恋しくなる度に島田に連絡をしていた。私の誘いは断られることも多かったが、何回かに1回、気が向いた時彼は私を呼び出しては抱いた。私はつかの間の時間にすがりついていた。

だが最近は煉獄さんと一緒にいる時間が増え、寂しいと思うことも少なくなっていたため、島田には連絡をしていなかった。やはり、内心は良くないと思っていたのだ。こんな関係はすっぱり終わらせるべきだと分かっていたのだ。だが、目の端で追ってしまう私がいた。そしてそんな私を島田は知っていた。でも、そんな悪循環でじわじわと摩耗する私を、煉獄さんとの日々が温めてくれた。

「島田、ごめん。もう私島田には会わない。」

私は震える声で伝えた。彼を断ち切ることが、今なら出来るかもしれないと思った。

「へぇ、麻衣、俺が居なくても大丈夫なの?あんなによがってたのに?」

「やめて。」

「俺なら君のこと、心も身体もよく分かってる。」

「やめて。」

都合のいい女を取られるのが嫌なのか、島田は静かにそう続けた。人通りの多い道だ。誰が聞いているかも分からない。でもそれよりも私は誰よりも煉獄さんに知られるのが嫌だと思った。今までの行いは現実で、変えられない。都合がいいのはわかっている。でも、まるで最低な貞操観念の私を煉獄さんに知られたくなかった。声が震える。情けない。私は煉獄さんの背中の服を掴んだ。煉獄さんはどんな顔をしているだろう、私のことを呆れているだろうか。

「もう、話は済んだだろう。失礼する。」

煉獄さんは静かに言った。私の手を取る。

「おい待てよ、君は麻衣のことが好きなのか?麻衣のこと、教えてやろうか?コイツの好きな攻められ方とか、体位とか。」

「俺は君の言っていることがよくわからん。それに、初対面だが、俺は既に君のことが嫌いだ。」

「は…?」

「君の話に興味はない。」

煉獄さんの真っ直ぐな物言いに島田は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしている。

「中彩のことは、これから知っていく。君には関係の無い事だ。」

「お、おいっ…」

そう言うと煉獄さんはその後、島田が言う言葉を無視してただ私の手を引いた。
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