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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第9章 暖かい風、熱い熱


「イくっ…」

女がそう言って脱力する手前に腰を打ち付けていた男が自身を抜き、女の腹に欲望を吐き出す。モザイクがかかっているが、間違いなくそれは煉獄自身も覚えのある、いわゆる男性器だろう。女の腹が吐き出された白濁に汚れて艶めかしく光る。その後どちらからともなく裸の男女が口付けをする。どうしたらそんなに大きな音が出るのかと思うほど、耳に残る水音に誰もが息を飲む。

「これがセックス」

斉藤は淡々と話して固まる煉獄の肩を叩きスマホの画面を閉じた。だが、当の煉獄からはなんの反応もない。ふと斉藤が煉獄の顔を覗き込むように伺うと、煉獄は鼻血を出して固まっていた。

「煉獄先生!鼻血出てる!」

「なにっ…!?」

黙っていた煉獄はその言葉にはっと我に返り、反射的に自身の口元を拳で擦った。確かに血がついていた。

「しばらく休憩だ!!!!!」

煉獄は大きな声で言い放つと、声をかける斉藤を素通りして足早に稽古場を出て水道へと向かった。







「よもやよもやだ…」

水道で鼻血を洗い流しティッシュで止血する。俺は先程の映像を必死で頭の中から振り払った。あれが、セックス…。つまりまぐわいのことであったか…あんなにもあっさりと他人のまぐわいを見ることが可能な世だとは。あの男女は自らのまぐわいが映像に撮られていることに気づいているのだろうか。俺は呼吸を落ち着かせた。生徒に情けないところを見られた。全くもって不甲斐なし。もう少し落ち着いた後、戻るとしよう。俺は深く息を吐いて外の風に当たった。

そして最近の自身を振り返る。中彩をこの腕に抱いていたあの夜から、収まらない熱の正体がわからず、中彩とも上手く会話が出来ない。どうしたというのだ。俺は。

そのように思い悩んでいると、斉藤少年が道場から出てきた。俺を見つけては申し訳なさそうに頭を垂れ、隣に腰かける。

「煉獄先生、さっきはすみません。皆の前で…」

「良いのだ。俺の方こそ、取り乱して済まない。」

俺がそう言うと斉藤は俺に向き直る。

「煉獄先生、もしかして今日様子がおかしかったのって、何か悩みでもあったんですか。」

「悩み?特にないが。いや…」

俺は考える。思えば、この気持ちを誰かに話したことがなかった。インターネットで調べるという手もあったが、いざとなると、この感情を形容することが出来なかった。
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