• テキストサイズ

どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第8章 初めての料理


…朝か。窓の外から差し込む陽の光で俺は意識を得た。今日は道場での稽古もない。中彩も仕事が休みだ。恐らく中彩は暫く寝ているだろう。先に起き、中彩が起きるまで外で身体を動かすとしよう。目を閉じたまま考える。

そこまで考えて、自分が酷く深く眠っていることに気づく。こちらの世界に来てからも全集中の呼吸は続けている。だが、まるで身体中の力が抜けているようでなかなか目が開かない。このように眠ったのは久方ぶりに思う。まるで幼い頃のようで、懐かしさすら感じる。俺は微睡む意識の中指先を動かして、徐々に感覚をとりもどす。何かに触れている。温かく、柔らかく、良い香りがする。

む…?

「!!!」

俺の腕の中で中彩が眠っていた。否、俺が中彩を抱くようにして眠っていた。中彩は静かに呼吸をしている。よもやよもや、これは一体どういうことなのか。このような窮屈な体勢でも中彩は深く眠っている様子で、俺はここ数日の中彩の疲労を回顧する。ひどく疲れているようだ。

眠る中彩を起こしてしまわないかと、そのまま動き出す訳にも行かず、俺は眠っている中彩を見つめた。すると、胸の奥に何やら違和感を感じ始めた。胸の奥の炎がゆっくりと内面を焦がし、中彩の伏せられた睫毛や唇や流れた髪に目を奪われる度、固く凍っていた場所が焼かれ、ゆっくりと溶けていく。溶けだした内面は全身を巡り、深い深い熱になる。そのような自分に気付き、一層違和感は強くなる。

「どうしたというのだ」

俺は自分の身体に起こる異変に思考が追いつかなかった。このままの体勢でいることは出来ないと考えつつも、もう少しこのままで居たいと考える自身とで動転した。たが、待て、この状態で中彩が目覚めたらどのような反応をするだろうか。不快に思うのではないだろうか。俺はそこまで考えるとやはり離れるべきかとゆっくりと中彩から腕を解き、身を引く。

「うんん、煉獄さん……」

あろう事か、離れた俺を追いかけるように中彩は俺に擦り寄り、俺の身体に腕を絡めた。中彩の甘い声と合わさって俺は胸に感じた違和感が暴発し、熱が一気に上がった。

「中彩!!!」

気づいたら中彩の名前を呼んでいた。
/ 113ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp