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どうか笑って。【鬼滅の刃/煉獄杏寿郎】

第8章 初めての料理


暗い部屋。夜ご飯を食べ、洗い物を片付けてお風呂に入り、お布団に潜るものの私は寝付けなかった。ここ最近の生活リズムが崩れたせいかもしれない。

「中彩さん、彼氏出来ました?」

ぼうっと天井を見つめながら、私は会社で言われたことを思い出した。そして隣ですやすやと眠っている煉獄さんを見る。相変わらずの綺麗な寝顔だ。見とれそうになる所を、振り払うように私は首を横に振る。

煉獄さんは私にとって大切な人であることに変わりはないけど、好きかとか、そう聞かれるとよく分からない。間違いなく魅力的な人だと思うけど、他の世界から来た彼を半ば一方的に匿っている責任感で一緒にいるだけで特別な感情、元彼に抱くような感情はない。そうだ。

「中彩…?」

そんなことを考えていたら、煉獄さんがふと私の名前を呼んだ。驚いて煉獄さんの方を見ると、煉獄さんは変わらずすやすやと眠っていて、どうやら寝言だったらしい。

「ここにいますよ、煉獄さん」

私は煉獄さんの寝顔を覗き込み、耳元でそっと小さく呟いた。すると、急に煉獄さんの腕の中に引きずり込まれた。

「!?!?」

寝ぼけた煉獄さんが私のことを抱きしめた体勢で眠る。煉獄さんの大きな身体に抱きしめられ、私はその腕の中にすっぽりと収まって動けない。

待って、待って、どうしよう!?

私は鼓動が速くなって息苦しさを覚える。自分の心臓の音で煉獄さんが起きてしまうのではないかと思うくらい、私の心臓の音がうるさい。煉獄さんの匂いがする。煉獄さんの温もりが伝わってくる。私は緊張して涙が出てきた。そんな私とは裏腹に煉獄さんは規則的な彼の呼吸を繰り返す。

先程まで煉獄さんのことを好きかどうか分からないと思っていたのに、急に煉獄さんと半ば事故とはいえ距離が近くになっただけで、私は落ち着きを失う自分に焦った。いや違う、どんな人が相手でもこの体勢は緊張する!そうだ落ち着け私!

煉獄さんの腕の中から出られないかもぞもぞと動く。だが、あろう事か足まで絡められてがっちり捕まってしまい出られない。

も、もう、諦めよう…

少し窮屈ではあったが、冴え渡っていた意識が温かな温もりに段々と眠くなってくる。私は自分の頬に触れる煉獄さんの髪にくすぐったさを覚えながら目を閉じた。とても緊張する一方で、煉獄さんの腕の中は本当に温かくて、とても安心した。
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