第8章 初めての料理
「よく帰った!」
「はい、ただいまです。」
玄関を開けるとすぐに煉獄さんの声が聞こえる。煉獄さんは私のところに歩いてくると頭をポンポンと撫でた。照れくさい半面、家に帰って誰かがいるって幸せだなぁと私は廃れた自分の心に苦笑する。
「あれ、なんか美味しそうな匂いがする…?」
甘い香り、ブイヨンの香り、トマトの香り。私のお腹がぐぅーと鳴った。
「ああ!俺が作った!」
「え?」
「今から帰るという連絡があったので温め直した!」
「え?」
煉獄さんの言っている言葉の意味がわからず、私は靴を脱ぎながら首を傾げる。ま、まさか…と思いながら、テーブルの上を見ると、そこにはさつまいもご飯とロールキャベツが乗っていた。
「わぁ〜〜〜ごはんがある〜〜〜」
私はテーブルの上に乗るそれがとても輝いて見えた。仕事終わりに手料理…ありがたすぎる…!煉獄さんも食べずに待っていてくれたらしい。私の言葉に満足そうに頷き、「さあ頂くとしよう!」と箸を渡した。
「いただきます!」
「いただきます!」
煉獄さんが手料理を作ってくれるなんて…なんていい人なんだ…私はロールキャベツを箸で切って口に運ぶ。おいしい、やっぱりご飯が好きな人が作ると料理は美味しくなる気がする。疲れた体に染みる完璧な味付けだ。さつまいもごはんもおいしい。久しぶりに食べた。私は煉獄さんにこの溢れんばかりの感謝をどう伝えようかと向き直る。
「煉獄さん、すごくおいし…「うまい!!!!!」
私の言葉をさえぎって煉獄さんが叫ぶ。私はそれを見て吹き出してしまった。
「やはり中彩と飯を食うとうまい!」
「そうですね、おいしいです。作ってくださって、ありがとうございます。」
「ああ!」
「そういえばどうやって作り方調べたんですか?」
「インターネットだ!」
すごい、この間教えたばかりなのにもう使いこなしている…!私は煉獄さんがスマホを持ちながら、「とても便利なものだな!」というのにしみじみとした。
「でも、ご飯中はスマホいじっちゃダメです。」
「そうなのか?」
「そうです。」
私はその後も「うまい!」と叫ぶ煉獄さんに合わせて「はい、おいしいですね」と何度も返した。煉獄さんにこんな才能があったとは。一見、豪快だからと大雑把なように見えて、やっぱり器用な人なんだなぁ。またたまに作ってもらおうかな。
